思春期
思春期男子の「身体の変化・性・マスターベーション」に親はどう向き合えばよい?
思春期男子の心と身体、どのような変化・特徴があるの?
思春期になると、脳下垂体の前葉というところから、性腺刺激ホルモンが分泌されます。その刺激を受けて、精巣から分泌されるテストステロンは、体の男性化および精子形成にのために必要な男性ホルモンのひとつ。その働きにより、下記のようにさまざまな体の変化が生まれます。
- ・ 精巣(せいそう)、睾丸(こうがん)が大きくなる・陰嚢(いんのう)の色が変わる
- ・ 陰茎(いんけい・ペニス)が長く・大きくなる
- ・ 陰毛(いんもう)が生えるようになる
- ・ 精通がはじまる子もでてくる
- ・ 変声(声変わり)がはじまる
- ・ 脇の下に毛が生える、ヒゲが生えてくる、乳輪の面積が少し広くなり、乳頭とともに茶色や黒色に変わる
- ・ 包皮(ほうひ)が後退してくる、陰嚢・包皮が黒みを帯びる
- ・ 肩幅ががっしりと広くなる
- ・ 筋肉が発達する
- ・ ニキビが出てくる
- ・ 体臭が出てくる
Q:思春期の子ども、イライラしたり、情緒不安定になったりするのはなぜ?
思春期の時期は性ホルモンの影響で、体だけでなく心にも、大きな変化が生まれます。自分の体の急激な変化にとまどうのと同時に、ホルモンバランスが乱れることで、精神的にも不安定になってしまうんですね。でもこれは、誰もが通る道。保護者はそんな子どもの状態をそっと見守り、必要なときには優しくサポートしてあげてくださいね。
子どもの成長、発達に合わせて、親が注意すべきことは?
発達のスピードは一人ひとり違うので、他人と比べて焦ることはありません。でも、精巣が大きくならないと体は成長しませんし、その逆もしかり。生殖器の成長と体の成長は、ある程度リンクしていると考えて、子どもを観察してみてください。男子の場合、15歳までに、99.6%の人に二次性徴が起こる(あるいは第二発育急進期)と言われています。
- ・13歳6か月で精巣の増大が認められない
- ・精巣の増大がはじまってから5年以上経過しても、性成熟が完了しない
上記にあてはまる場合は、「思春期遅発症」という病気の可能性もありますので、医療機関をたずねてみるのも良いでしょう。
【家庭での性教育】「性」について、何歳くらいから話をすればよい?
中学3年生になると、性感染症について学校で学ぶので、そのタイミングに合わせて伝えるのがいいかもしれません。ただし学校では、学習指導要領が10年に1度しか改定されない上に、生徒の実態に即していないため情報は古いまま(2019年4月に実に14年ぶりに「性教育の手引き」が改定)。
十分な時間もないうえに、「セックス」をきちんと教えないのに、性感染症をコンドームで防ぐことは教えることになっており、学校での指導だけでは「完璧!」とはいえない現状があります。
どのような内容を伝えるかは、家庭によってもそれぞれですが、日常の中で何度でも繰り返し伝えることができる、家庭での性教育が大事になってくるのですね。
性交について、子どもにどんな風にアプローチすると良い?
人間には、子孫を残すことを目的としない「ふれあいの性」もありますが、赤ちゃんができる可能性があることなので、「子ども」がすべきことではない、ということをきちんと伝えましょう。「絶対に、ダメ!」と、ただ否定するのではなく「責任が伴うこと」だと、ぜひ教えてあげてほしいのです。
思春期になると普段の会話もままならないため、自分の子どもが「何をどこまで理解しているかわからない…。」「今さら、性の会話なんてできない…!」ということにもなるでしょう。性教育の本やマンガを参考にしながら、自分も一緒に学ぶ気持ちで、取り組んでみてはいかがでしょうか。
自分で子どもに話をするのに抵抗を感じる保護者は少なくありません。そんなときは、性について書かれた書籍を活用してみてください。性教育本のページでも紹介している下記の書籍を、手渡してみたり、子ども部屋に置いてみたりすることもおすすめです。
参考図書:
『マンガでわかるオトコの子の「性 」』染矢 明日香(著)/合同出版株式会社
『ジェームズ・ドーソンの下半身入門: まるごと男子! 読本』ジェームズ ドーソン (著)/太郎次郎社エディタス
その他、色んな性教育本をコチラで紹介しています。
Q:中学生でも、本人同士の合意があれば、セックスしても良いの?
あとで後悔しないためにも、セックスすることでどんなリスク・責任が伴うのか、ふたりともが理解している・話合えていることが大切。「大好きだから、結婚するまでしない」も、「大好きだから、結婚するまではコンドームやピルを使ってしっかり避妊する」も、どちらも大事な責任のとり方。
相手と気持ちや意志をきちんと共有し、責任ある行動をとれる大人になってほしいですね。
子供のマスターベーション、どう受け止めたらよい?必要なことなの?
マスターベーションは、広く行なわれていて、性別・年齢に問わず自然なことであり、決して恥ずかしいことや、悪いことではありません。もちろん、したくない人やしたことがない人も普通で、人それぞれです。
そして、思春期に身につけて欲しい、大切なこととでもある「性的欲求のコントロール」を身につけるためにも、特に男子にとって、マスターベーションは必要な行為だといえます。
保護者は、汚いもの、タブーなものと捉えずに「自然なこと」だと捉えてあげましょう。
Q:マスターベーションのマナー、何を伝える?
マスターベーションは自然なこととはいえ、非常にプライベートなことであります。以下のようなマナーは、知っておいてほしいもの。
- 自分の部屋やひとりになれる空間・時間で行うこと
- 精液のついたティッシュはきちんと処理すること、下着は手洗いをして洗濯かごに入れること
同性の保護者(男親)から話をしてもらう方がお子さんも受け入れやすいことがあるでしょう。
また、シングルマザーやどうしても伝えづらいという人は、先にご紹介したような思春期男子向けの性教育本を手渡してみるのがおすすめです。
Q:マスターベーションする際に気をつけることはある?何度やっても大丈夫なの?
方法として一番オススメなのは、指をリング状にして行なう古典的なやり方。マスターベーションは、何度してもOKでやりすぎたら体に悪い影響を及ぼす、などということもありません。
ただし以下のような方法は、トラブルの原因にもなるので注意が必要です。
- 床などの固いモノに性器をこすりつける方法
- ・固いものの刺激がないと射精できなくなり、柔らかい女性の膣では射精できなくなる可能性がある。
- 足をピンと伸ばしてマスターベーションを行なう方法
- ・通常の性交時に、上手く体制をとれなくなる場合がある。
- どちらの方法も、女性の膣の中での射精が困難になるというリスクがあります。男性不妊の原因の10%を占める「膣内射精障害(ちつないしゃせいしょうがい)」が引き起こされる可能性もありえるのです。
- 不衛生な道具などを使用した方法
- 雑菌が繁殖しやすいため、尿道炎などのトラブルのもとになります。マスターベーション専用の道具であっても、衛生面に気をつけて清潔な状態で使うこと。
命育プレミアム会員になると「男子の性教育」「マスターベーション・性欲」に関する他の記事や専門家お悩みQ&Aが読み放題!
例えば:
「男性ホルモン」って??〜子どもも納得!意外と知らない男性ホルモンの秘密
「お悩みQ&A」|「息子が、射精後だと思われる下着やタオルをそのまま洗濯物に出していて不快です…。」
「お悩みQ&A」|「マスターベーション」「男性の身体」の他、性の悩みや疑問に専門家が回答
イラスト:IGA DESIGN
監修:高橋 幸子
高橋先生の一言アドバイス
最近では、「オナニー」や「マスターベーション」という言葉に代わって、「セルフプレジャー(自分で自分を楽しませるという意味)」という言葉が使われるようになってきました。また、シングルセックス、ソロセックスといった、「まずは1人で楽しめるようになることが大事」という思想も広がりつつあります。 “自分で自分を幸せにできるからこそ、相手も幸せにすることができる”。
自慰という行為をタブー視するのでなく、性的欲求をコントロールするひとつの方法として大事なことなんだと、前向きにとらえてあげてくださいね。
高橋 幸子
埼玉医科大学 医療人育成支援センター ・地域医学推進センター/産婦人科
山形大学医学部卒業。埼玉医科大学総合医療センター研修医、埼玉医科大学病院産婦人科助教、埼玉医科大学地域医学医療センター助教を経て、現職。年間80回以上、全国の小学校・中学校・高等学校にて性教育の講演を行っている。教育雑誌、TVなど、性教育テーマでのメディア掲載・出演実績多数。
活動:
日本家族計画協会クリニック非常勤医師 http://www.jfpa.or.jp/
彩の国思春期研究会西部支部会長
命育コンテンツ協力:PPFAコンテンツ、伝え方ナビ、お悩みQ&A