【命育 × 『子ども防犯性教育』企画】第2回 人にしちゃいけないことって?― 子どもに伝えたい「バウンダリー(境界線)」という考え方

子ども防犯性教育_バウンダリー

コンテンツ協力:『10歳までに知っておきたい まんがでわかる! 子ども防犯性教育』/監修:産婦人科医 高橋 幸子、NPO法人体験型安全教育支援機構 代表理事 清永 奈穂、まんが作画:フルカワ マモる 出版社:KADOKAWA

 
「人にしちゃいけないことは何?」
そう聞かれたとき、子どもたちはどんな答えを思い浮かべるでしょうか。
たたくこと、けること、悪口を言うこと。たしかに、どれも大切な約束です。
けれど、日常生活の中で子どもたちが気づかないのは、もっと判断がむずかしい場面かもしれません。ふざけて友だちに触っただけ、遊んでいるつもりだった、相手も笑っているように見えた。そんなとき、「これは人にしちゃいけないことなのかな?」と判断するのは、簡単なことではありません。
 
第2回では、KADOKAWA『10歳までに知っておきたい まんがでわかる! 子ども防犯性教育』を手がかりにしながら、「人にしちゃいけないこと」とは何か、そしてそれを考えるヒントとなる「バウンダリー(境界線)」という考え方について、一緒に考えていきます。
 

【クイズに挑戦】人にしちゃいけないこと、どれだ?

まずは、以下のイラストを見てみてください。 友だち同士で遊んでいる、よくある場面が描かれています。ここでクイズです。この中で、「人にしちゃいけないこと」だと思うものは、どれでしょうか。

子ども防犯性教育_バウンダリー

 
「相手も笑っているし、遊んでいるだけに見える」 「これくらいなら、よくあることかも?」そう感じた人もいるかもしれません。
答えは、「①②③④、ぜんぶダメ」
「え? ぜんぶ?」 「ふざけてるだけなのに?」そう思った方も、いるのではないでしょうか。ここで大切なのは、何を基準に『人にしちゃいけないこと』を考えるのかという視点です。

人にしちゃいけないかどうかは「相手の気持ち」で決まる

人にしちゃいけないかどうかを考えるとき、つい「悪気があったか」「自分がされていやなことがどうか」という点に目を向けがちです。しかし、「されている人がどう感じているか」を判断ポイントとすることが大切です。
たとえ笑っているように見えても、心の中では「いやだな」「こわいな」「やめてほしいな」と思っていることがあります。一方で、同じ行動でも「楽しい」「平気」と感じる人もいます。同じことをしても、感じ方は人それぞれ違う。この前提に立たなければ、「人にしちゃいけないこと」を正しく判断することはできません。

子ども防犯性教育_バウンダリー

バウンダリー(境界線)とは?子どもにも伝えたい基本の考え方

バウンダリー(境界線)って、何?

ここで紹介したいのが、「バウンダリー(境界線)」という考え方です。
バウンダリー(境界線)とは、「ここまでは大丈夫」「ここから先はいや」という、自分の中にある目に見えない線のことを指します。からだに触れられることだけでなく、気持ちや心、距離感、言われたくない言葉などにも、それぞれバウンダリー(境界線)があります。
これは、人によって違います。同じことをされても、平気な人もいれば、いやだと感じる人もいます。また、同じ人であっても、その日の体調や気分、置かれている状況によって、感じ方が変わることもあります。昨日は大丈夫だったことが、今日はつらく感じる、ということも決してめずらしくありません。
だからこそ、「前は大丈夫だったから今回も大丈夫」「みんながやっているから問題ない」と決めつけてしまうと、知らないうちに相手のバウンダリー(境界線)をこえてしまうことがあります。人と関わるときには、この「バウンダリー(境界線)は人それぞれ違う」という前提に立つことがとても大切です

「人にしちゃいけないこと」の正体とは?

ここまでをふまえると、「人にしちゃいけないこと」とは何かが、少しずつ見えてきます。
それは、相手のバウンダリー(境界線)をこえてしまうことだと考えられます。
 
触っていいかを確かめないまま近づくこと。
相手の表情や反応を見ずに続けてしまうこと。
「いや」と言われてもやめないこと。
 
こうした行動は、本人に悪気がなくても、相手の境界線を大切にできていない状態です。まんがのクイズで「ぜんぶダメ」という答えになったのは、どれもがこの境界線をこえてしまう可能性を含んでいたからです。
「ふざけていただけ」「遊んでいるつもりだった」という理由は、相手が感じた「いや」を消すことはできません。人にしちゃいけないかどうかは、行動の内容そのものよりも、その行動が相手のバウンダリー(境界線)を尊重していたかどうかで考える必要があります。

バウンダリー(境界線)を超えられたとき、どうする?

ガマンではなく「伝えていい」ということ

「それはやめてほしい」「今はいや」「触らないでほしい」
こうした言葉を口にすることに、ためらいを感じる子どもは少なくありません。けれど、これらはわがままでも、相手を困らせる言葉でもありません。自分のからだや心を守るために必要な言葉です。
もし、自分のバウンダリー(境界線)を超えられていやな気持ちになったときは、ガマンせずに伝えること。自分の気持ちを言葉にすることは少し勇気がいることかもしれませんが、それは人との関係を壊すことではなく、むしろ安心して関わるための大切な力だと言えるでしょう。

断ることが苦手な子どもたちへ

多くの子どもは、「断ると嫌われるかもしれない」「空気が悪くなるかもしれない」と感じています。その不安は、とても自然なものです。大人でも、同じように感じる場面があるのではないでしょうか。
けれど、いやなことをいやと言うのは、相手そのものを否定することではありません。その行動について、「今はできない」「ここまでは受け取れない」と伝えているだけです。断ることは、相手を攻撃することではなく、自分の気持ちを大切にする選択だと考えられます。
ただ、「言葉で伝える」ことは、頭でわかっていても簡単ではありません。だからこそ、日ごろからの大人の関わり方が大切になります。

子ども防犯性教育_バウンダリー

周りの大人ができること|バウンダリー(境界線)を「言葉にする」こと

子どもが誰かの境界線をこえてしまったとき、大人ができることのひとつは、その場で気持ちを言葉にしてあげることです。
 
「今の言い方、ちょっといやだったかもしれないね」
「相手、少し困った顔をしていたね」
 
こうした声かけは、叱るためではなく、「何が起きていたか」を一緒に確認し、相手の気持ちを考えるためのものです。
もうひとつ大切なのは、大人自身が境界線をこえられたときに、気持ちを伝えてみることです。
 
「今の言い方、ちょっといやだったな」「それをされると、びっくりするよ」
 
大人が自分の気持ちを穏やかに言葉にする姿は、子どもにとって「いやだという気持ちを伝えていいんだ」という大きな学びになります。また、気づかないうちに誰かを傷つけてしまったとき、「ごめんなさい」を伝える練習にもなります。これは、日常の中でできる大切なトレーニングです。

おわりに

人にしちゃいけないことを知ることは、ただルールを覚えることではありません。
自分にも、相手にも「いやな気持ち」があることに気づき、からだやこころの境界線を大切にすることにつながります。
次回は、小学生のうちに知っておきたい、女の子の体について取り上げます。

26

       

おすすめ性教育コンテンツ