プライベートゾーンをどう教える?指導のポイントと絵本・教材のご紹介 【幼稚園、保育園・小学校向け】

プライベートゾーンは「他人に見せても触らせてもいけない、性的に関係ある、自分だけの体の大切な場所」。プライベートゾーンを侵害された時に「おかしい」と気づくことができる知識について、園や学校で、子どもに伝えるにはどうしたらいい?
ここでは、指導のポイントや子どもに伝えるときに役立つ絵本や教材をご紹介します。
 

(2023/3/13 一部改訂)

 

子どもたちを性暴力の被害者、加害者、傍観者にしないための「生命(いのち)の安全教育」って?

 
「生命(いのち)の安全教育」という言葉を聞いたことはありますか?園や学校の先生方は知っている人も多いかと思いますが、保護者は「聞いたことがない」という人も少なくないかもしれません。
「生命(いのち)の安全教育」とは、令和2年に内閣府男女共同参画局で「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」が決定したことを受け、文部科学省が行うこととなった課題の一つです。令和3年4月には、文部科学省より「子どもたちを性暴力の被害者、加害者、傍観者にしないための教育」の教材と指導の手引きが公表されました。そして、ついに令和5年4月からは、全国の園・小学校・中学校・高等学校等においてこの「生命(いのち)の安全教育」の学びがはじまります。
具体的には、プライベートゾーンや他人との境界線、SNSとのつきあい方、デートDVなどを指導することとされ、例えばプライベートゾーンは、幼児~小学生頃から伝える内容として、イラストを交えた指導票の教材や手引きを使って、先生が子どもたちに教えることが求められています。
保護者も含めてどなたでも閲覧・使用できるので、まだご覧になっていない方は文部科学省ホームページをご覧ください。
 
※参考:性犯罪・性暴力対策の強化について|生命(いのち)の安全教育(文部科学省ホームページ)
 

プライベートゾーンはどこ?教え方のポイントは

プライベートゾーンとは水着で隠れる部分(胸、お尻、性器)+口

プライベートゾーン(またはプライベートパーツ)とは、アメリカで発祥した言葉で、「他人に見せても触らせてもいけない、性的に関係ある、自分だけの体の大切な場所」とされています。具体的には、胸、お尻、性器、口。幼児から小学生の子どもに伝えておきたい、大切な性教育の要素です。
ところが「プライベートゾーンは大切」と言われても、子どもにはうまく伝わりません。小さな子どもには、シンプルで分かりやすく伝えることがポイントです。
まず場所については、「水着で隠れる場所(胸、おしり、性器)と口」と伝えると小さな子どもでもイメージがしやすいです。
 
そのとき、男の子の胸は隠れていないからプライベートゾーンではない、と思われがちですが性別に関わらず胸はプライベートゾーン。イラストを見せながら伝えるときは、男の子もラッシュガードを着ている絵が含まれたものを活用したり、水着ではなく「下着で隠れる場所」と表現したりすることができます。
また、プライベートゾーン以外は大切ではないのかというと、もちろんそうではありません。
ユネスコの「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」では、人の身体について「誰もが、自らのからだに 誰が、どこに、どのように触れることができるのかを決める権利をもっている」「身体のどこがプライベートな部分かを明らかにする」とされています。プライベートゾーンについて説明する前に「自分の身体は自分だけの大切なもの」「自分の身体のどこに、誰が、どのように触れることができるか、自分で決められる」ということを伝えられるとよいですね。

プライベートゾーンはどこ?イラストで解説

教え方のポイント①(プライベートゾーン以外も含めて)自分の体は自分のもの

プライベートゾーンを教えるにあたり、日常的に「自分の体は自分のもの」だと知ってもらうことも大切。家庭であれば、お着替えタイムや、お風呂やシャワーのときなどに、「ここは、頭、胸、顔…」など、クイズ感覚で話ができると楽しくプライベートゾーンを伝えることができます。また「自分の体だから、自分で洗おうね」と、自分で体を洗える年齢の子には他の体と同じように、性器や胸等洗えるように教えてあげることができます。
プライベートゾーンは、「他人に見せても触らせてもいけない、性的に関係ある、自分だけの体の大切な場所」ですが、自分で見たり触ったりすることは自然なこと。幼児自慰や自慰行為、体への興味から性器を触るときなども含めて、自分で触るのは問題ないことも伝えてあげましょう。
また、「保護者が幼稚園・保育園の先生などが着替えの補助をするときや、お医者さんが診察をするときは、見たり触ったりしてもOK」など、どういうシーンなら見せたり触らせたりしても良いかを伝えることも大切。ただしOKとはいえ、たとえばお着がえのときなら「ズボンぬがせるけどよいかな?」と、保護者や保育者が声がけし確認してあげることを忘れずに。「~してもいい?」「いいよ/イヤだよ」の練習にもなります。

教え方のポイント② 他の人のプライベートゾーンを見たり触ったりしてはいけないこと

自分のプライベートゾーンが大切であると同時に、お友達や家族、他の人のプライベートゾーンも大切だということ。勝手に見たり触ったりしてはいけないことを同時に教えてあげるとよいでしょう。園の先生や保護者の胸やお尻など、プライベートゾーンを触ったりしてきたときには、「そこは大切なところだから、触られたらイヤだよ」とはっきり伝えることで、他の人にもプライベートゾーンがあることに気付くことができます。

教え方のポイント③ 体のどこであっても、少しでもイヤな気持ちになったら「イヤだ」といってよい

もし、プライベートゾーンに限らず体のどこかを触られたり見られたりして、少しでもイヤだなと思ったときは、「『イヤだ!』『やめて!』と言って、その場から離れて(逃げて)、周りの大人の人に話をしてね」と教えておくことで、子ども自身が自分の体を守ることにつながります。
ここで覚えておきたいことは、「イヤだというのは、とても勇気がいる」ということ。イヤだと言えなかった子どもが「自分が悪いんだ」と自分を責めてしまったり、怒られるのではないかと誰かに相談するのをやめたりしないよう、そのような場面になったとしても「決してあなたは悪くないよ」と、あわせて伝えてあげることも大切です。
また、人によって触ったり見られたりしたらイヤな場所はそれぞれ。その時々や環境によっても違います。プライベートゾーンに限らず、「体のどこであっても」イヤな気持ちになったら「イヤだ」と言っていいことも、教えてあげたいポイントです。
 
前述の「生命(いのち)の安全教育」(文部科学省)の教材には、幼児期や小学生向けの内容に「プライベートゾーン(プライベートパーツ)」のことが触れられています。PDFやパワーポイントで作成されていますので、ここで紹介したポイントを補足しながら、園や学校、家庭でも活用してみてくださいね。
 

 

プライベートゾーンを教える時期やタイミングは?

子どもにプライベートゾーンを教える時期やタイミングとしては、日常のやり取りの中で伝えたり、集団の場で伝えたりすることができます。

夏の水遊び・水泳の授業がはじまる時期や幼稚園・保育園のお着替え指導の場面で

プライベートゾーンを教えるタイミングとしては、園では水遊びやシャワーなど体の露出が増える夏のはじめや日常生活でのお着換え指導の場面、小学校では水泳授業がはじまる夏前などがおすすめ。事前に話をしておくことで子ども同士のプライベートゾーンのトラブルを防いだり、トラブルがあったときになぜいけないのかを理解してもらいやすくなります。

カンチョーやズボン下ろし、スカートめくりなど、プライベートゾーンのトラブルが発生したタイミング

カンチョー、ズボンおろしはプライベートゾーンの侵害

 
小学生頃になると、カンチョーやズボン下ろし、スカートめくりなどの場面をみられることがあります。すでにプライベートゾーンの知識を伝えている場合は、改めて何がいけないのかを考える機会をつくり、まだプライベートゾーンについて教えられていない場合は、この機会に当事者の子どもたちだけでなくすべての子どもたちにプライベートゾーンについて話をする時間を設けるとよいでしょう。
また、カンチョーやズボン下ろし、スカートめくりなどの行為への対応については、注意しておきたいことが。特にやったのが男の子だった場合は、「子どもがすることだから…」「男の子はバカだなぁ。」と、周囲の大人が容認してしまうことがありますが、カンチョーやズボン下ろしなどの性的ないやがらせは、プライベートゾーンの侵害です。決して見過ごさずに、プライベートゾーンについて指導をしましょう。
こうしたプライベートゾーンに関する日常的なトラブルによって、子どもたちが知らないうちに加害者にならないように、また被害にあったときに「イヤだ」と言えたり大人に話ができたりするように園や小学校などの集団の場でプライベートゾーンの知識を教えることが大切です。

プライベートゾーンを教えるのに役立つ教材をご紹介

 
プライベートゾーンについて子どもに教えるとき活用できる教材をご紹介します。

幼児や小学校低学年には読み聞かせできる絵本がおすすめ

小さな子どもには、絵本を使って読み聞かせをしたり、イラストを見ながら説明したりがおすすめ。一緒に読むことでプライベートゾーンについてが分かる絵本を集めました。
 

幼児・小学校低学年向けにからだ・プライベートゾーンについて学べる絵本はこちらから

ワークショップで楽しく学ぶ!命育のぬり絵、ワークシート無料ダウンロード可能

命育では、工作やクイズをしながら体やプライベートゾーンについて学べるワークショップも開催しています(有料・不定期)。また、無料でダウンロードできるワークシートもご用意していますので、ぜひご活用ください。
 

性教育セミナー/ワークショップ情報はこちらから
性教育教材ダウンロードページはこちらから

【幼児~小学生高学年に関わる大人向け】体のことやプライベートゾーンについて学べる!おすすめ動画

こちらは、世界で年間110万人に性教育プログラムを提供しているPPFA(全米家族計画連盟)によるアニメーション動画(日本語訳版)です。小さな子にシンプルに分かりやすく体やプライベートゾーンについてを教える方法がオシャレなアニメーションで紹介されています。大人が観て子どもに伝えるポイントを学ぶか、子どもと一緒にみて、大人が解説しながら観ることができます。
 

PPFA性教育動画_身体

「体」について教え方が学べる動画はこちらから
その他の性教育動画ページはこちらから

保育者・教員・保護者自身の知識のアップデートにおすすめの本紹介

最後に、幼稚園や保育園の先生、学校教員、保護者など子どもの周囲にいる大人が知識をアップデートするための書籍をご紹介します。
産婦人科医の高橋幸子先生の監修による命育の書籍です。幼児期、児童期、思春期それぞれの年齢に応じた性の具体的な伝え方を紹介。幼児期編には、プライベートゾーンの他、幼児自慰や、赤ちゃんってどこからくるの?といった子どもからの質問の応え方等が。
 
『子どもと性の話、はじめませんか?ーからだ・性・防犯・ネットリテラシーの伝え方』|高橋幸子(監修)、出版:CCCメディアハウス

 

書籍の詳しい内容はこちらから

指導の参考に!「乳幼児期の性に関する情報提供」―保健師や親子に関わる専門職のための手引き

厚労省の調査研究事業として複数の有識者の監修のもと命育が制作した、保護者が子供に性の知識を伝えるサポートをするための手引きです。プライベートゾーンの他、人はそれぞれ違うこと、男女の身体の違い、子供と大人の身体の違い、いじめやネットリテラシーまで「保護者が子供にどう伝えたらいいか」をまとめたものですが、子供に関わる専門職の方自身が性の基本的な知識を学んだり、子どもに伝えるポイントを知ることができたりと活用できるかと思います。
命育サイトや厚労省ホームページから無料でどなたでも閲覧・ダウンロード可能なので、ぜひご活用ください。

「乳幼児期の性に関する情報提供」―保健師や親子に関わる専門職のための手引き プライベートゾーン

専門職のための手引き(命育サイト内)はこちらから
厚労省健やか親子21からはこちらから

命育に寄せられたプライベートゾーンにまつわるトラブル事例と専門家回答

幼稚園・保育園児のプライベートゾーンのお悩み例と専門家回答

Q:幼稚園の同じクラスの男の子にキスをしているそうです。子供同士ふざけているだけだと思いますが、やめさせるべきですか?
 
A:同級生や年齢の近い子供たちに「プライベートゾーン」について教えることが大事!
知っている人でも知らない人でも、それが子供同士でも、見せて触らせてと言われて、嫌だ!と思った時には「嫌だ」と言っていい…(略)(回答:産婦人科医 高橋幸子先生)
 

回答全文はこちらから確認いただけます。

 

小学生のプライベートゾーンのお悩み例と専門家回答

Q:まだまだ幼く可愛い小学生の息子ですが、甘えて私のお尻や胸を触ってくることがどうしても嫌です。「嫌だからやめて」というのは冷たいでしょうか。
 
A:例え親子であっても、プライベートゾーンの考え方は大切です。
子どもだったら、何でも我慢しないといけないとか、子どもの要望には応えるべきということはありません。「好き=相手の気持ちを考えないで何でもしても良い」ということではないことを教えないと、気が付かないで人を傷つけてしまうことにもなります(略)(回答:助産師 土屋 麻由美さん)
 

回答全文はこちらから確認いただけます(会員限定記事)

まとめ

子どもへのプライベートゾーンの教え方について、いかがでしたか?今回ご紹介したようなポイントや教材・絵本などを、ぜひ幼稚園・保育園・小学校などでのプライベートゾーンの指導の参考にしてみてくださいね。

 
 

命育では、幼稚園・保育園・学校職員向けの研修会や子ども向け・保護者向けの出張講演を多数実施しています。
内容に応じて、専門家講師をアテンドさせていただき、「生命(いのち)の安全教育」に向けた講演や性教育の講演を実施しています。また、楽しく性の知識を学べる幼児~小学生向けの専門家監修の教材も命育サイトにて販売しています。詳しくは、下記よりご覧ください。

 
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参考:国際セクシュアリティ教育ガイダンス【改訂版】―科学的根拠に基づいたアプローチ(編集:ユネスコ / 翻訳:浅井 春夫,艮 香織,田代 美江子,福田 和子,渡辺 大輔 /出版: 明石書店/出版年:2020年)

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