【専門家Q&A】幼児の自慰行為(じいこうい)、原因と知っておきたい親の対応は?

幼児の自慰行為に親はどう対応する?

幼児の子供は、自分や他人の体に興味津々な時期。特に男の子と女の子とで異なる性器については、興味が高くなりがちです。今回は、そんな興味の対象の性器を触る「幼児の自慰行為(じいこうい)」についてご紹介します。

「自慰行為(マスターベーション)をする子は、性欲が強い」は、ウソ!幼児自慰の原因と基本的な対策

乳幼児の保護者が抱える子どもの性の言動・行動悩みTOP1は、「自慰行為」

厚労省の調査研究事業として、全国の3~6歳の未就学児を持つ保護者を対象に命育が行った調査*では、子どもの言動・行動で困ったことがあると回答した人のうち、「自慰行為を目撃したあとの対応」に困ったと回答した人が、35.6%と最も多い結果となりました。
その他の回答としては、「子どもからの性の質問への回答⽅法」が25.6%、「性器や排泄物の名前を連呼するときの対応」が21.7%と、よく見られる子どもの言動や行動が上位に続きました。
この結果を見ても、幼児の自慰行為は、実は多くの保護者が悩む子どもの行為なのだということがわかります。

厚労省調査研究事業_子どもの性行動の悩み「幼児自慰」

参考:「保健師等による幼児等低年齢児の保護者に対する効果的な性教育方法に関する調査研究」(厚生労働省「令和3年度子ども・子育て支援推進調査研究事業」により、2021年に命育にて実施。n=2215)

幼児自慰は、性欲と異なる自然な行為

お子さんが性器を触っているのをみて、つい「やめなさい!」と叱ってしまう親は少なくないでしょう。しかし幼児期であっても、男の子女の子ともに自慰をすることは珍しいことではありません
自慰とは、マスターベーションや性器いじり、セルフプレジャーとも呼ばれますが「幼児自慰」は、思春期以降の性行動とは異なり、性欲からくるものではないといわれています。性器を触っているうちに、圧迫感や刺激から偶然に気持ちよさを発見し、心地よさや安心感を得たいとき、不安な気持ちを落ち着かせるときにする行為であるともいわれます。
小さな子供が自慰をしているのをみて、戸惑うこともあるかもしれませんが、とても自然な行為なのです。
 

場所や時間関係なく自慰(マスターベーション)をしてしまう、突然はじめた気になる自慰行為があるときは

上記の通り、自然な行為ではありますが、一方で場所や時間に関係なく性器をいじってしまう、固執している、などの場合は子どもがストレスや精神的に不安定な状態からきていることも。一緒に体を動かすような遊びをする、コミュニケーションやスキンシップをとるなど、お子さん自身の気持ちをケアしてあげましょう
また、これまではしていなかったのに、突然幼児自慰をするようになった子の中には、他の誰かから教わった(性的な被害を受けた)経緯により、性器を触ることで気持ちが良くなると知ったというケースが、一部には見られるようです。
責めるような言い方にならないように、「それをどこでしったの?」とその背景を確認することで、性被害のサインに気づくことにもつながります。
 
お子さんの情緒に問題があることに心当たりがある場合は、専門家や医療機関に相談してみることも良いでしょう。

子供が自慰行為をしていたら?知っておきたい親の対応

前述のとおり、男女問わず幼児自慰は自然なこと。とはいえ、いざ、子供が幼児自慰をしていたり、保育園や幼稚園でやっていることを知らされたりすると、動揺してしまうこともあるでしょう。しかし「恥ずかしいからやめなさい!」と叱ることは、子供に性を恥ずかしいものと認識させてしまい、性に関して何か困ったことがあった時「親に相談してはいけない」というメッセージにもつながります。
もし子供が自慰をしているのをみかけたら、まずは落ち着いて、以下のようなことを伝えてあげて下さい。
 
いけないことでも恥ずかしいことでもないよ
性器はプライベートゾーンだから、人前で触るのはやめよう
性器を触ることはとてもプライベートなことだから、ひとりだけの時間や場所でやろう
性器は綺麗な手で触ろう
強い刺激を与えるような方法はやめよう
 
プライベートゾーンのことをまだ伝えられていない場合は、まずはプライベートゾーンとは何かを教えてあげてくださいね。自分の体を守るための大切な知識となります。
 
「水着で隠れる場所と唇(口)は、プライベートゾーンといって、人に見せたり触らせたりしてはいけない、あなただけの大切な場所なんだよ」
 
と教えてあげてください。また、もしプライベートゾーンを見たり触ったりしようとする人がいたら「イヤだ」と言っていいこともあわせて伝えてあげたいですね。

親は叱らないで幼児の自慰行為

専門家が回答!幼児自慰に関するお悩みQ&Aご紹介

実際に、幼児自慰について悩んでいる保護者は少なくありません。ここからは、命育お悩みQ&Aコーナーで回答している「幼児自慰」についてのQ&Aをご紹介します。
 

お悩み:娘が園で自慰行為をしていると先生から言われました。女の子がという驚きと恥ずかしさ、どうやめさせたらよいのか、分かりません。

 
専門家回答:男女ともに肯定的に受け止めてあげて、2つの約束を丁寧に伝えてあげて
そうですよね、性についておとなも教えてもらっていないので、どう受け止めて対応したら良いか戸惑うのは当たり前です。
実は、多くの子どもが幼児期から性器を触ると気持ち良いということを発見し利用していきます。イライラする、腹が立つ、眠いのに眠れない、一人で淋しい、などの時、自分の体に触れ、その気持ち良さで自分の心をコントロールしていきます。特に幼児期の子どもにとっては、指吸い、耳たぶを触るなどと同じで、子どもの持つ素晴らしい力です。男女ともに、肯定的に受け止めてくださると嬉しいです。
以下についても男女共通のことですが、性器は自分だけの大切なところで、傷つきやすいので、
 
きれいに洗った手で優しく触る。
必ず一人だけになれる場所(家のトイレ、家のお風呂、自分の部屋、布団の中)で触る。
 
の2つの約束を丁寧に伝えてください。床や家具に性器があたって気持ち良さを経験すると、その方法を使い続けることがあります。見つけたときはしかりつけるのではなく受け止め「でもその方法は大切な性器を傷つけるよ」と2つの約束を教えてください。
子どもの興味は移ろいやすいですよね。長時間触り続ける、場所の約束を丁寧に教えたのに所構わず触る、ことがあれば、SOSです。きちんと洗えていないことから来るかゆみ、感染による皮膚炎や虫刺されなどの病気、自分ではコントロールしきれない辛いことがあったのかもしれません。しかって止めるのではなく「かゆいのかな?何かいやなことがあったの?」と話しやすい雰囲気で問いかけてみてください。
(思春期保健相談士・徳永 桂子)
 

お悩み:うつ伏せで、床にペニスを擦り付けるような自慰行動をしていました。やめさせた方がよいでしょうか?

 
専門家回答:嫌悪の念を持ちすぎず、気をそらせるのがよいとされています
お母さんとしては、困惑した気持ちになりますよね。ただ、これは小児(幼児)自慰や小児マスターベーションといわれ、声を荒立ててやめさせるものではない、癖のようなものといわれています。気持ちがよいところを見つけて、暇を持て余していると、つい触ってしまうようです。大人が「恥ずかしい」「いやらしいもの」という嫌悪の念を持ちすぎると、自己を否定されたような感覚だけが残ってしまうことにも。
人がいるところでずっと触っているようなら、「そこはプライベートゾーンだから、人前で触るのはやめようね」「ブロックで遊ぼうか?」など気をそらしてあげてはいかがでしょう。
(助産師・池田 匠美)

幼児の自慰行為、周囲の大人・保護者の対応は?まとめ

いかがでしょうか?自分の子供が性器を触っていたら、つい動揺してしまう方もいるかと思います。まずは「自然なこと」だと思い出して、落ち着いて声掛けをしてあげてください。日ごろからプライベートゾーンについての会話をしていることで、人前で触ることの注意は伝わりやすくなります。お風呂タイムにリラックスした中で、ぜひプライベートゾーンについても話をしてあげてくださいね。
 
お悩みQ&A監修者:思春期保険相談士・徳永 桂子/助産師・池田 匠美
 

 

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イラスト:ぴよととなつき

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