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本日のテーマ
#1「いつまでも心に残る、帝王切開の傷」
本日のお客様
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池田 A美さん(仮名)・30代
2歳の女の子がおり、現在第二子妊娠中。

相談内容
第一子の時、予定日超過の末の誘発分娩で3日間陣痛に耐え続けても出産にいたらず、緊急帝王切開で産まれました。それから2年が経つ今でも、帝王切開で残った傷を見ると自然分娩の人とくらべて自分が劣っているように感じたり子供に出産の時の話をどうやって伝えたらよいのか、悩んでしまったりします。今第二子妊娠中ですが、上の子にお腹の赤ちゃんがどのように産まれてくるのかも、どう説明して良いのか分かりません。
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シオリーヌさん、こんにちは。ちょっと、聞いてください。

 

帝王切開に関して、私が悩んだポイントは3つです。

 

  1. ①緊急のため、心の準備が追いつかなかったこと
  2.  

  3. ②自然分娩の友達に「この子は自然じゃないんだね〜」と言われて悲しかったこと
  4.  

  5. ③子供に出産の時の話をするとき、どう言えばいいのか悩むこと

 

特に③は現在進行形の悩みです。

 

現在、第二子を妊娠中ですが、妊娠が判明したときVBAC※1をしたい気持ちもあり家族に相談したところ「母親のエゴで子供を危険にさらすのか」と言われてしまい、結局また帝王切開の予定です。

 

帝王切開の友達はたくさんいますが、本当に納得してる人は少ない気がします。仕方ないと思うしかない、と諦めている感じです。

 

最近は、「帝王切開も立派なお産だよ」と言ってくれる風潮がありますが、それでも全てのモヤモヤが晴れることはない気がします。

池田さん、ご相談いただきありがとうございました。

 

予定日を超過した中での誘発分娩、そして3日も続いた微弱陣痛。最後には帝王切開となった分娩、本当に本当に頑張られましたね。

 

緊急での帝王切開と予定での帝王切開ではそれぞれの怖さがあるかと思いますが、緊急帝王切開の場合、特に「突然のことであり、自分で意思決定をする隙がない」ことが、術後の心にわだかまりを残す大きな要因だと感じます。

 

ただここで確実に一つお話しできることは、出産の方法に優劣はないということ。

 

考えてみてください。3日間も終わりの見えない痛みに耐え、それでもなお赤ちゃんを無事出産するために自分の身体に麻酔をかけてメスを入れるのです。 本来手術とは自分の健康を取り戻すために行うものですが、帝王切開の目的は「赤ちゃんを無事に産むため」

 

赤ちゃんに会うために、自分の命をかけて子宮まで届くような大きな傷を自分につくるのです。それが出来る人を、立派な母親と言わずしてなんと言うのでしょうか。

 

経腟分娩も帝王切開も、言うまでもなく立派なお産です。 今目の前のお子さんを、無事に産んであげられたご自分を、どうか褒めてあげてくださいね。

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あたたかい言葉をたくさんありがとうございます! 読みながら、思わず泣きそうになってしまいました…。

 

予定帝王切開を経験した人の中には、私のように微弱陣痛のすえに緊急帝王切開をした人に対して「陣痛を経験しているなら、自然分娩の人の話にも入れるからいい」という気持ちを持つ方もいると聞きます。

 

○○を経験していない私はダメ、○○を経験している方が良い、みたいに優劣をつけてしまうことを、私も含め、やめられたらいいのに。

世の中には、人の出産を評価しようとする人が、一定数いるように思います。

 

「分娩時間10時間だったんだ。初産にしては良いほうだね」

 

「帝王切開だったんだ。陣痛味わなくていいなんて幸せだね」

 

そんな風にして、安産・難産、幸・不幸と人のお産をジャッジメントする人たちに苦しめられているお母さんの話を、残念ながらよく耳にします。

 

何気ない会話のさまざまなタイミングでお母さんの心を締め付け、お母さんの子育てに、こんなにも大きな影響をあたえるのに。

 

大切なのは、赤ちゃんとお母さんが無事であること

 

「元気に(無事に)産めた」

 

そのことをどうか、もっと認めてほしい。 お産審判をする人たちに、そう伝えていきたいと感じます。

 

そしてお母さん自身も、もっと自分自身を誇りに思っていただけたらと思います。

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色々書きましたが、本当に悪気があって言う人は少ないんだろう、とも分かるんです。私たち当事者が1番気にしているからこそ、被害者意識でそう聞こえるだけかも知れないな、と

 

今になってはそう考えることもできますが、どうしても悲しい気持ちになってしまうことも。

 

そんな中、「元気に(無事に)産めた」は、とても心の支えになる言葉ですね。 「元気に産まれて、今も元気である」というのは本当にありがたいことだと、思いました。

周囲の方の発言を「悪気はない」「本当は子供と自身の安全のために、言ったのかもしれない」と改めて捉え直せること、とても大切なものの見方ですね。

 

おっしゃる通り、自身に余裕がない状態では、他者の言葉を事実以上につらく受け止めてしまうことも。 それ自体は全く悪いことではなく、ご自身の気持ちを否定する必要もないのですが、少し客観的に捉え直すことで、落ち着く気持ちもあります。

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お話聞いていただき、とてもスッキリしました!

 

こんな風に自分のお産の話を、誰かに肯定してもらえる場や機会があればとても良いですね。お産のふりかえりをする、という言葉を聞いたことがありますが、これからの育児を前向きにするために必要なことなんじゃないかなと感じました。

 

ところで、子供(上の子)には、自分自身が帝王切開で産まれたことをどのように伝えたらよいのでしょうか?

お子さんへ説明する際には、

 

  • ・赤ちゃんが産まれてくる方法(出産)には、赤ちゃんの通り道(産道)を通って産まれる方法と、手術でお腹に窓を開けてあげて産まれる方法のふた通りがあること
  •  

  • ・その両方に優劣はなく、お母さんや赤ちゃんがより元気な状態で生まれてこられる方法を相談して決めること

 

これらの事実を、ありのままご説明いただくことが良いかと思います。

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お話聞いてくださり、ありがとうございました!また、保健室におしゃべり(愚痴?)しに来ますね。

※VBAC(「Vaginal Birth After Caesarean」)…帝王切開後の経膣出産。過去の分娩が帝王切開だった母親が、経膣出産を行うこと。通常、帝王切開後の次回分娩時は子宮破裂のリスクを避けるために再び帝王切開を行うが、過去の帝王切開の具体的な方法、産道や胎児の状態など総合的に判断し、経腟出産が可能となる場合がある。また多くの病院では、VBACを行っておらず、希望する際には必ず病院・医師に相談、確認が必要となる。

       

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