児童期

「男性ホルモン」って??〜親子で学ぼう、意外と知らない男性ホルモンの秘密

「男性ホルモン」って何?子どもにどう説明すればいい?

「男性ホルモン」とは、男子らしい体つきになるよう、脳が体に発信している命令です

一言で言うと、体を男性にするホルモンのこと。あまり知られてはいませんが、お母さんのおなかのなかにいる赤ちゃんって、最初はみんな女子なんですよ。8週目ごろになってはじめて、男性の遺伝子を持つ赤ちゃんは、徐々に男の子のカラダへと変化。12週~22週でアンドロゲン(男性ホルモン)の値が一時的に上昇することで、男子の体と脳がつくられていきます。その後、男性ホルモンの働きは、いったんストップ。再び放出がはじまるころに二次性徴が起こり、大人の体へ近づいていくと言われています。

 

Q:お母さんの体から出るホルモンは影響しないの?

 

お母さんのホルモンは関係ないと言われています。赤ちゃん自身が、男性ホルモンを大量に放出(「アンドロゲンシャワー」と呼ばれています)。このアンドロゲンシャワーを浴びることで、陰茎や陰嚢が発育し、顔形や骨格の成長が促され、体も脳も男子に。その時点でホルモンの放出はいったんとまります。

 

Q:「男性ホルモン」って、どんな変化をもたらすの?

 

7~10歳のころ、男性ホルモンはお休み中。思春期になると再び放出して、脳、副腎、精巣から、成長の引き金となる命令が出され、より男性的な体へと変化していきます。

 

Q:男女の違いを恥ずかしいと感じるようになるのはなぜ?これもホルモンの影響?

 

小学4年生の保健体育で習う「男女の体の違い」。恥ずかしいと感じること自体は、ホルモンの影響ではありませんが、子どもたちは授業で初めて知り、これまで意識していなかったのに、急に恥ずかしくなってしまうというケースも多いかもしれませんね。男女の違いだけでなく、自分の性器の大きさや形などが、気になりはじめるのもこのころからかもしれません。

 

Q:「男性ホルモン」が影響する病気ってあるの?

 

答えはYes。でも女子とは少しその背景が違います。
女子には、月に1回の変化(月経)がありますが、男子にはありません。
男性ホルモンがきちんと出ているのか、その量ははたして適量なのか、異常を判断するのはむずかしいところです。でも男性ホルモンの場合、放出される量よりも「出始めるタイミング」が大事だと言われています。早すぎる・遅すぎると、次のような病気が起こりうるので、注意が必要です。

 

<思春期早発症>

  • ・9歳未満で精巣・陰茎・陰嚢などの明らかな発育
  • ・10歳未満で陰毛発育
  • ・11歳未満で腋毛、ひげの発生や声変わりをみる

症例はとても少ないですが、男性ホルモンが早くに出すぎる病気です。ホルモンが早く出はじめたことで、6歳にして大人並みの陰嚢・陰茎部のサイズになってしまった幼児も…。この場合、薬などでホルモンの放出を止めてあげる必要があります。

 

<思春期遅発症>

  • ・14歳までに精巣容量の増大がない

 

つまりは、ホルモンが出始めないこと、思春期のころになっても、陰嚢・陰茎部のサイズが幼稚園児並みであるなど、成長が見られないということ。治療を行わなくてもそのうち自然と第二次性徴が起こる場合もありますが、なかには遺伝子や染色体異常により、ずっと変化が見られないケースも。その場合は原因となる病気の治療や、ホルモンを補う必要があります。15歳になっても声変わりがおこらないようなら医療機関に相談しましょう。

また、第二次性徴で急激に男性ホルモンが分泌されると、体が対応しきれなくなって、「乳暈(にゅういん)現象」が起こることもあります。胸の乳首の部分が少し膨らんだり、痛くなったり…。しかしこれは異常ではなくよくあること。2年ほどでもとに戻る、あるいは気にならなくなることが多いそうです。

 

Q:早い・遅いは、どう判断すればいい?

 

幼児なのにおちんちんが大きすぎる、小学生にしては小さすぎる、というケースは、個人差なのか異常なのかなかなか判断がつきにくいものです。保育園や幼稚園など、同じ年頃の子と成長を比べやすい集団生活のなかでは、先生が気づくというパターンも多いそうですよ。判断するうえで一番わかりやすいのが、陰毛の生え具合(男子:平均13歳で、11歳~16歳ごろ/女子:平均12歳で、10歳~15歳頃)。年齢と成長に合わせ、早すぎる・遅すぎるの判断基準にしてみてください。とはいえ、むずかしいお年頃の場合、異性であるお母さんにはなかなか見せてはくれないかも…。可能ならばお父さんやおじいちゃんなど同性の家族と連携して、お風呂でチェックしてもらうのも良いかもしれませんね。

 

Q:児童期には、どんな点に注意するといい?

 

一般的な子どもと我が子の違い、差がある場合、そこへいかに早く気づき、行動してあげられるか。それが子どもの人生を決めると言っても過言ではありません。たとえば、性同一性障害の子ども。二次性徴がはじまる前に気づけば、脳から出るホルモンを止めて、二次性徴させないようにすることも可能。「のど仏」が出て男性化してしまった体は、もう元には戻せないのです。

 

●早めに精神科に行ってみる、という策も

 

ホルモンをコントロールする処置を受けるためには、精神科の診察※を受けてから約2年間が経過していること、という厳しい条件があります。つまり、早めに通院をしていることが鍵になる、ということですね。 成長を見守るうえで、「もしかして…」と思った場合は、一度診断だけしておいてもらうという手もあり。「精神科」のハードルが高ければ、まずは保護者だけで先に相談もOK!手術前には患者である子どもの経過をきちんと見てくれるので、安心してくださいね。

※GID(Gender Identity Disorder=性同一性障害)専門の精神科医師がいる精神科を探して受診してください

 

イラスト:北野貴代

高橋先生の一言アドバイス

「性同一性障害」の原因はいまだ不明で、身体は男子・心は女子のケース、身体は女子・心は男子のケースなど、さまざまなケースが存在しています。だからこそ大事なのは「男なんだから」「女なんだから」と、保護者が“普通”を決めつけてしまわないこと。それが一番の解決策じゃないかと、私は考えています。なぜなら性別の不一致感による悩みは、自殺につながるケースが非常に多い、とても深刻な問題だから。大切な我が子の命を守るためにも、一番身近な家族はやさしく受け入れてあげたいですね。

高橋 幸子

埼玉医科大学 医療人育成支援センター ・地域医学推進センター/産婦人科

山形大学医学部卒業。埼玉医科大学総合医療センター研修医、埼玉医科大学病院産婦人科助教、埼玉医科大学地域医学医療センター助教を経て、現職。年間80回以上、全国の小学校・中学校・高等学校にて性教育の講演を行っている。教育雑誌、TVなど、性教育テーマでのメディア掲載・出演実績多数。

活動:

日本家族計画協会クリニック非常勤医師
彩の国思春期研究会西部支部会長

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