思春期

ピルで生理をずらす(早める/遅らせる)ことはできるの?大事なイベント時に生理をずらす方法とは

 

監修:産婦人科医 柴田 綾子先生

 

生理が「勉強・運動に影響を与えている」と感じている中高生は、約8割

NPO法人子宮内膜症啓発会議が行った調査によると女子中学生、女子高校生の約80%が「月経によって運動や勉強に影響するほど体の不調がある」と回答しています。
特に、女子中高生は生理が始まってからまだ年月が浅く、自分の生理について十分に理解できていない場合もあります。
そのため、生理による影響は当たり前のものと捉えてしまったり、誰に相談していいかわからなかったりしてなかなか改善につなげられていない可能性も。

参考 女子特有の健康問題「月経関連疾患と学校生活」(NPO法人子宮内膜症啓発会議)

思春期の生理の特徴とは

思春期の生理は、まだ周期が安定していないので、一般的な生理周期よりも早いこともあれば、遅いこともあります。また、経血の量も安定せず、貧血を起こすくらい多くなることがあることも特徴です。
初経から3年ほど立つと、60~80%の生理周期が安定してくる(米国産婦人科学会)ともいわれておりこの時期は、生理とうまく付き合っていくことが重要となります。

 

参考:「思春期女子の月経異常-その他の月経周期異常」(公益社団法人日本産婦人科医会)

「Menstruation in Girls and Adolescents: Using the Menstrual Cycle as a Vital Sign」(米国産婦人科学会)

 

生理をずらす(早める・遅らせる)方法はピル一択。ピルの服用にはどのようなものがある?

テストや部活など大事なイベントのために生理をずらしたい場合、できることはピルの服用一択といえます。生理をずらすために服用したいピル、どんなお薬なのか、ピルがどうして生理をずらすことができるのかをご紹介します。

ピルとは

ピルとは、本来ならば丸薬という意味を指すのですが、経口避妊薬のことを一般的にはいいます。
エストロゲンとプロゲステロンという2種類のホルモン剤を配合しており、これらのホルモンを経口から補充することで、避妊や月経痛の改善など、生理に関するさまざまな悩みに対して効果がある薬です。

初潮(初めての生理・初経)があればピルの服用は可能

ピルと聞くと、服用したことがない保護者にとっては「子どもには早い」「大人が飲むもの」とイメージするかもしれません。
しかし、低用量ピルは初潮が来ていれば服用はできるとされています(日本産科婦人科学会/日本女性医学学会のOC・LEPガイドライン2020より)。日本産婦人科医会では、ピルを服用するタイミングとして「初経後 3 カ月経ってから」を勧めています。

また、ピルは骨の成長に影響を与える可能性もゼロではないといわれているため、成長スパートが終了してから開始するのがお勧めです。成長スパート終了の目安は「身長の伸びが 1 年間に 1 ㎝を切ったとき」とされています。

ピルの服用やいつから服用するかは、目的や得られるメリットをふまえて、保護者とお子さんとで検討し産婦人科で相談すると良いでしょう

 

 
 

ピルが生理をずらす(早める・遅らせる)仕組み

生理を早めたり、遅らせたりできるピルですが、ピルが生理をずらす仕組みは「服用する方法」にあります。
ピルには女性ホルモンが含まれており、生理を早めたい場合は、ピルの服用を早めに終了することで、女性ホルモンが補充されなくなるので生理がはじまります。一方で、生理を遅らせたい場合は、ピルを服用し続けることで、その期間も女性ホルモンが補充され続けるので、ピルの服用を終了するまでは生理がはじまることはありません。
*ただし2週間以上など長く生理を遅らせて止めておくと不正出血が出ることがあります

ピルの種類(低用量ピルと中用量ピル)

月経移動に使われるピルには、低用量ピルと中用量ピルがあります。一般的に使われることが多いのが中用量ピルです。中用量ピルは低用量ピルと比較してホルモンの含有量が多いため、確実な効果が発揮できる一方、吐き気や頭痛などの副作用が強く出てしまい、継続して服用が難しいという方もいます。
一方、低用量ピルは含まれるホルモンの量は中用量ピルよりも少ないため不正出血が起きやすいというデメリットがある反面、副作用が少ないため、服用を続けやすいです。

 

生理をずらす(早める・遅らせる)ピルの飲み方

生理をずらすためにはピルの種類はもちろんですが、ピルの服用方法が最大のポイントとなります。生理をずらすためのピルの服用方法のポイントと「早めたい」「遅らせたい」など希望別にご紹介します。

 

ピル服用のポイント① ピルの処方には婦人科など医療機関への受診が必要

まず、ピルを服用するためには、婦人科を受診して診察を受ける必要があります。特に中学生高校生など学生の場合は、医師と相談し生理周期をずらすために活用すべきピルを選ぶ必要があります。まずは、婦人科を受診してください。

ピル服用のポイント② 受診の前に生理周期の把握が必要

受診をする前に生理周期を把握しておくことが必要です。医師は、現在の生理周期も参考にしているため、前回と前々回の生理周期はわかるようにメモを取っておくと良いです。
特に、中学生・高校生のうちは生理周期が乱れやすい傾向にあります。おおまかな生理周期でも良いので医師へ伝えられるように記録しておきましょう。

ピル服用のポイント③ 生理を早めるピルの飲み方

生理を早めたいときには、移動したい生理の一つ前の生理の開始3~5日目からピルの服用を開始します。その後、生理が来てほしい日の3日前までピルを服用し続けます。ピルの服用を止めてから約3日(2~5日後)ほどで生理が来ます。一般的に中用量ピルは10日間以上の内服、低用量ピルの場合は14日間以上の服用期間が必要とされています。

ピル服用のポイント④ 生理を遅らせるピルの飲み方

生理を遅らせたい場合には、移動したい生理が本来開始するであろう日の5~7日前から、遅らせたい日まで毎日ピルを服用し続けます。この場合は低用量ピルでは移動する力が弱いため、中用量ピルを使用します。ピルを服用中は生理がこず、ピルの服用を修了してから約3日後(2~5日後)くらいで生理が来ます。
排卵前にピルを服用していないため排卵は来る可能性が高く、妊娠している可能性に注意が必要です。また経血量や月経に伴う月経痛などはピル服用前と同じくらいになるとされています。

参考: 「月経周期の変更方法」(公益社団法人福岡県薬剤師会)

ピルで生理をずらす(早める・遅らせる)際の注意点・副作用

ピルで生理をずらすことによって当然ながら副作用などが出てくることも考えられます。そのため、ピルで生理をずらす場合の注意点や副作用については、あらかじめ知っておくことが必要です。

ピルで生理をずらすときの注意点① 生理の周期を把握しておく

生理を早める場合でも、遅らせる場合でも生理予定日からピルを服用するタイミングを起算します。なので、生理周期を把握していなければピルの服用を始めるタイミングやピルを服用中止するタイミングが分かりません。
生理周期をずらす前に、まずは自分の生理周期をだいたいでもいいので把握しておくことが大切です。

ピルで生理をずらすときの注意点② 生理の周期が乱れる要因を排除する

初潮を迎えてからしばらくは生理周期がずれてしまうとはいえ、それ以外の原因でも生理周期外れてしまう可能性があります。なので、生理周期が乱れる要因はあらかじめ排除しておくことが必要です。生理周期が乱れる要因とは、急激なダイエットやストレスとされています。保護者は、日常的にそうしたことがないか、意識するとともに、少なくとも、生理をずらしたいときに関しては、生理周期を変える前の周期からは要因を排除しておきましょう。

ピルで生理をずらすときの注意点③ 決められた日数、決められた時間に継続してピルを飲み続ける必要がある

生理周期を変える場合、決められた日数確実にピルを服用しなければなりません。飲み忘れてしまった場合は、生理周期を確実に変えるのが難しくなってしまいます。
また、ピルは基本的に毎日同じ時間に服用します。飲み忘れないようにタイマーをセットするなどの工夫が必要です。

ピルで生理をずらすときの注意点④ ピルの副作用を知っておこう

低用量ピルの副作用としては、飲み始めの頃に起こる吐き気や頭痛、不正出血などのマイナートラブルがあります。様子をみながら飲み続けるとおさまってくることがほとんどです。
症状が強い場合は、医師に相談をしましょう。

また重要な副作用として、ピルを飲むと血液中に血のかたまり(血栓)ができやすくなる血栓症のリスクがあります。
しかし、低用量ピルによる血栓症のリスクは、一万人に3〜9人程度といわれ高い確率ではありません。ただし、次のような血栓症リスクがある人は服用に注意が必要です。

ピルで生理をずらすときの注意点⑤ ピルを飲んではいけない場合がある

ピルはすべての人が服用していいというものではありません。
以下のような血栓症のリスクがある人は、必ず医師に相談することが必要で、問診にて服用してはいけないと判断されることがあります。

  • ・肥満の人
  • ・タバコを吸う方(1日15本以上喫煙をする人)
  • ・40歳以上の人
  • ・脳梗塞などを生じやすい危険な前兆を伴う片頭痛のある人
  • ・高血圧の人
  • ・血栓症に関連する病気にかかったことがある人
  • ・血栓症に関連する病気にかかった家族がいる人
  • ・フライト(飛行機)など長時間動けない状態になる人
  • ・手術前 ※

※ 手術前にピルの服用は禁忌とされていますが、産婦人科以外の科では、中学生、高校生でのピル服用を想定されていないことも。服用中に他の科を受診する場合は「低用量ピルを飲んでいる」ということを伝えることを忘れないように。

ピルで生理をずらす(早める・遅らせる)メリットは?

ピルで生理をずらすのにはさまざまなメリットがあります。ここからは、ピルで生理をずらすことでどのようなメリットがあるのかをご紹介します。

メリット①生理日と大事なイベントを重ならないようにコントロールできる

生理日に大事なイベントが重なるかどうかは、女性にとって非常に気になるポイント。イベントに生理が被ると、月経痛や出血等の不快な症状が出ることはもちろん、ナプキンやタンポンなどの準備もしなければならず荷物も多くなってしまいます。
生理をずらすことで、旅行やスポーツの大会など大事なイベントに生理をかぶせることなく、イベントを楽しむことができます
また、生理とイベントを重ならないようにコントロールする場合、イベントが過ぎてから生理が来るようにしようと考える方が多いのですが、生理を遅らせるときはイベントの日にピルを服用する必要があり、副作用でむくんだり、頭痛や吐き気がでることがあります。
移動したい生理の1ヶ月以上前からピルの服用を準備できるときは「生理を早める」方が、ピルの副作用の心配もなくイベントを楽しめるのでおすすめです。

「ピルで生理を遅らせる/早める」以外にできることは?

「できればピルを服用したくない」という保護者やお子さんもいるでしょう。
大事なイベントごとに生理が重なりそうなとき、ピルの服用以外に何ができるでしょうか。

生理トラブル・諸症状対策

生理に伴う精神的な不安定、イライラ、むくみ、月経前後の便秘や下痢はPMS(月経前症候群)の可能性があります。。PMSの原因は今のところしっかりとわかってはいませんが、女性ホルモンの変動によるものではないかといわれています。
イベントのときには、PMSや生理痛などの諸症状や生理トラブルの対処をあらかじめ準備していきましょう。

生理痛には鎮痛剤や漢方、PMSには漢方や市販薬などが使われます。日常生活にも気を配り、生理前後は無理をせずにゆったり過ごすというのも対策のひとつです。

旅行先でのお風呂や就寝時が心配なとき

中学生・高校生のお子さんの中には、「旅行先でお風呂や温泉に入るときはどうしよう」「就寝時にシーツや布団に血が漏れてしまわないか不安」と、心配する人もいるでしょう。

対策として、お風呂のときにはタンポンを活用する方法があります。タンポンは挿入すれば目立たないため、生理ということをバレずに入浴したり、プールに入ったりもできます。その他に、入浴の時間をずらしてもらうなども良いでしょう。湯船から上がったあとには経血が足などに垂れてきやすいため、濃い色のタオルをつかったり、すぐにナプキンやショーツがはけるように入浴前に準備しておきましょう。
また、就寝時の対策としては、大きめの夜用ナプキンを準備したり、寝ている間も漏れにくいショーツ型のナプキンや吸水ショーツを活用したりします。下着やパジャマの色を濃い色にしたり、経血が漏れた時用に腰の下にバスタオルをしいておくこともおすすめです。
お子さんと一緒に、実践しやすい対策を検討してみてください。

生理を遅らせる用途以外のピルの効能とは?

ピルには、生理をずらすだけではなくさまざまな効果が期待できます。毎日1錠を定期的に服用することで避妊効果や、生理痛、PMSの改善効果以外にも、にきびの改善効果や卵巣がんのリスクを低下させる効果も期待でき、女性にとっては服用することで多くのメリットを得られるといえるのです。
ほかにもピルの役割について詳しく知りたいという方は以下を参照ください。

関連記事: 避妊だけじゃないさまざまなピルの役割

ピルで生理をずらす(早める/遅らせる)ことはできるの?まとめ

ピルを活用することで生理を早めたり遅らせたりすることは可能です。しかし、生理をずらすためにはまず自分の生理周期を知らなければなりません。まずは、お子さん自身が生理周期を管理できるようにし、予定に合わせてピルを活用し、生理をずらすことを検討してみてください。
ピルを服用できるかどうかについては、婦人科など医療機関を受診して医師へ相談してください。

参考:「(3)月経調節に関して」(公益社団法人日本産婦人科医会)

「【電子版付】OC・LEPガイドライン2020年度版」(日本産科婦人科学会/日本女性医学学会)



 

監修:柴田 綾子

 

医師専門家(柴田先生)の一言アドバイス

試験や部活、旅行などの大事なイベントに生理が重なってしまうとお腹の痛みや経血などの心配で本来の力が発揮できないことが多くあります。初経が始まり、定期的な生理がある方であれば、ピルをつかって生理を移動することが可能です。生理を早めるには1つ前の生理が始まるまでに産婦人科を受診する必要があるので注意してください。
また、低用量ピルは毎日続けて定期的に服用することで生理痛やPMS症状を改善する効果もあります。生理の症状で困っているときは、産婦人科でご相談ください。

柴田 綾子

淀川キリスト教病院 産婦人科医

名古屋大学情報文化学部卒業するも、在学中の世界遺産を中心とした海外旅行をきっかけに「途上国で弱者となりやすい母子をサポートできる技術と知識を学びたい」と、群馬大医学部3年次に編入。沖縄県立中部病院産婦人科コースで初期研修後,淀川キリスト教病院にて勤務。


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本:

『女性の救急外来 ただいま診断中』

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