児童期 思春期

【国際基準の性教育】プレ思春期の子どもに個人の安全について何を教えたらいいの?後編(いじめ・性犯罪)

プレ思春期の子どもたちは、親であるあなたから境界線(ルール)の設置と、子どもたちが安全でいられるような支援を必要としています。ここでは、学校や外の世界、オンラインでの安全確保それぞれについて説明します。

 
※こちらの記事は、毎年世界で約120万人に性教育のプログラムを提供しているアメリカのPPFA(全米家族計画連盟)による記事を、許可を得て、命育にて翻訳・日本向けに医療監修のうえ作成しています。保護者が子どもに性のことを伝える難しさや抵抗感は、世界共通。
国際基準の性教育ですが、保護者や子どもの気持ちに寄り添いつつも「伝えておきたい知識をシンプルに・科学的に」伝えるコツを紹介しています。ぜひご参考ください。
 

 

性暴力や虐待についてプレ思春期の子どもとどうやって話したらいいの?

どなたも自分の子どもが被害者になりうると考えることすらしたくないでしょう。しかし、性的虐待は誰にでも起こりうることなのです。一方で、お子さんを守り、お子さんが自分自身を守るのを手助けする方法があります。
 
お子さんの生活に積極的に関わり、興味を持つことは、お子さんが被害に遭っているかどうかを知るための一番良い方法の一つです。必要なときにいつでも相談できることをお子さんに伝え、何を言ったり聞いたりしても、決して叱られることはないことをお子さんに伝えましょう。
 
性的虐待のほとんどのケースは、親や子どものどちらかが知っている人の手によって、孤立した1対1の状況で起こります。お子さんが二人きりで過ごす、大人やお友達に注意しましょう
グループで過ごすか、1対1であっても他の人から確認できる状況が一番よいでしょう。お子さんの見守りなどに関わる人を選ぶときは慎重に考え、お子さんが一緒に過ごす大人、子ども、親戚、コーチ、教師、ベビーシッターには気を向けるようにしましょう。
 
虐待の兆候は分かりづらい可能性があるため、何を調べるかを知ることが大切です。性器周辺の不快感や感染症、突然の行動の変化、学校での問題、不安、うつ、引きこもりなどはすべてサインになります。
 
お子さんの居場所や周囲の人を把握し、時間をかけて保育者(ベビーシッター、一時保育所、学童、医療提供者、家庭教師など)を選別していきましょう。お子さんのお友達の保護者と知り合いになりましょう。お子さんがその日のできごとをいつでもあなたに話したりできるようにしたり、お子さんの話を傾聴したりして、お子さんに信頼していることを示しましょう。
 

お子さんが虐待の被害にあっていると思われる場合:

虐待の疑いがある場合や、お子さんから聞いた場合は、深刻に受け止めましょう。あなたはお子さんを信じている、お子さんを叱ることはない、あなたはお子さんを守り、助けるつもりだと、伝えてください。
 
お子さんが怖がって心を閉ざしてしまわしないように、できるだけ冷静に目の前にいてあげてください。あなたとは自由に話すことができるように、お子さんを励ましてください。「それでどうなったの?」のような自由に回答できるような質問をして、お子さんが会話をリードできるようにしましょう。お子さんが話してくれたことが嬉しいと、伝えましょう。

 

虐待の報告方法:

お子さんや、身近な子どもの被害者を守るために、虐待を報告することは重要です。場合によっては、法的に虐待の報告を求められることもあります。お近くの児童相談所にできるだけ早く助けを求めましょう。通報に関しては、警察または児童相談所虐待対応ダイヤル(189)にしましょう。

 

虐待の身体的徴候がある場合や、お子さんが虐待者と接触したことがあると告げられた場合は、医師または看護師に連絡してください。虐待によって引き起こされた身体的な問題はすべて治療でき、後になって調査のための証拠を集めることもできます。

 

※児童相談所虐待対応ダイヤル(189)
「虐待かも」と思ったときに、すぐに近くの児童相談所に通告・相談ができる全国共通の電話番号。通告・相談は、匿名で行うこともでき、通告・相談をした人、その内容に関する秘密は 守られます。
児童相談所虐待対応ダイヤル(189)
 
※ 命育トラブルナビでは、性犯罪にあったときのホットラインを紹介しています。

 

虐待を受けたあとの生活:

虐待を受けた子どもたちが、専門家の助けを求めることは重要です。秘密が守られる無料のホットラインを利用して、地域のサポートにつながることができます。
 
虐待後は、回復するのに長く困難な道のりとなることがありますが、お子さんをサポートし、守り、励ます姿勢でいるようにしてください。起こったことはお子さんのせいではないこと、何があっても虐待を受けてもいい子どもなんていないということを伝えましょう。保護者が、お子さんが被害に遭ってしまったことについて自分を責めてしまうこともよくあることですが、保護者のせいではありません。責められるべき人は、たったひとり、虐待をした人です。
 
お子さんと虐待について話すのが難しい場合は、パートナー、親しい友人、または家族に助けを求めてください。また、自分の感情を処理し、お子さんをよりよくサポートするために、セラピストやカウンセラーに相談することも検討してみましょう。

いじめについて、どうやって子どもと話したらいい?

小学校高学年頃になると、いじめが問題になることも多くなります。それは対面でもオンラインでも起こります。どんな種類のいじめも、許されることではありません。いじめられている子どもは、以下の徴候を示すことがあります。
 

  • ・不幸である、恐れている。どこかへ行くことを拒否している
  • ・孤立している
  • ・原因不明の(説明がない)けが
  • ・慢性的な頭痛、腹痛、不眠、その他の身体的な問題
  • ・不安、自尊心の低下、学業不振など、感情や行動の変化

 

困難な人間関係の状況を乗り切る手助けをするために、お子さんの社会生活に関わり続けましょう。いじめとは何かを明確にし、何かあったら、あなたのところに助けを求めることができると伝えましょう。
 
もしお子さんがいじめられている場合、あなたにできることがあります。
 

  • 十分な愛情とサポートが必要です。傾聴し、慰め、いじめはお子さんのせいではないことを伝えましょう。
  • 対処するための方法を教えましょう。お子さんは、いじめを無視することもできるし、いじめをしている人にやめるように言ったりもできるし、そのグループにいようとすることもできます。
  • 学校を巻き込みましょう。お子さんに学校を巻き込むことの利点を伝えましょう。学校がさらなるいじめ防止のために取り組むことなど。いじめ加害者やその親に直接連絡するよりも、学校と協力する方が安全で効果的な場合が多いです。メモを準備しましょう。より詳細に情報提供すること(加害者の名前、いじめがおこった日付、誰が何を見たかなど)が、より解決しやすくなるでしょう。

自分のお子さんがいじめ加害者の場合に何をすればよいか:

もし、お子さんが誰かをいじめていると聞いたら、その非難を真摯に受け止めることが重要です。お子さんの行動があなたにとっては許容できるものであったり、普通なことであったりしたとしても、他人にとっては本当に苦痛だったり、危険をもたらしていたりするかもしれません。
 
お子さんの行動について、お子さんと会話をしてみましょう。どんなことがあっても愛しているが、どんないじめ行為 (肉体的暴力、からかい、悪口、うわさを広めること)も許されないことを伝えてください。なぜそんなことをしたのか理由を説明してもらい、行いを改める必要があること、そしてあなたがその手助けをすることを明確に伝えましょう。
 
状況を話し合うために、学校の誰かと話し合う必要があるかもしれません。子供がいじめを受けたり、家庭や個人的な問題が原因で問題が発生したりするのを防ぐために協力することを伝えてください。
 

 

お子さんがいじめを目撃した場合:

次のような、いじめられている人を支援するさまざまな方法をお子さんが実践する手助けをしましょう
 

  • ・いじめを受けているクラスメートに優しくしましょう
  • ・信頼できる大人に話しましょう
  • ・気が紛れるようなことをしましょう
  • ・いじめられている人がその場から離れられるように手伝いましょう
  • ・いじめが起きている時に、笑わない、仲間に加わらないなど、良い手本を示しましょう

 
インターネット上の、オンラインのいじめ(「ネットいじめ」 とも呼ばれる)は、対面のいじめと同じくらい深刻です。学校や公共の場でのいじめとは異なり、ネットいじめは24時間年中無休で、世界中の何千人もの人々から寄せられ、一人でいるときに届く。ネットいじめの例には次のものがあります。
 

  • ・脅迫、侮辱、または噂を含むメール、テキスト、メッセージをSNSに掲載する
  • ・相手の感情を害する目的に、偽のプロフィールやメールアドレスを作成する
  • ・恥ずかしい写真や動画を投稿する

 
学校によってはネットいじめに関するルールを設けているところもありますし、脅迫的暴力、未成年者の性的に露骨な画像の送信、オンラインでのストーカー行為など、ネットいじめの中には違法なものもあります。
 
ネットいじめについて、お子さんと話しましょう。オンラインで誰かをいじめることや、誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)することは決して許されないことを明確にしておきましょう。
また、オンラインで誰かに迷惑をかけられた場合は、あなたが一緒に解決に向けてサポートできることを伝えてください。もし物事が手に負えなくなってきたら、少しの間、携帯電話、コンピュータ、タブレットから離れてみるのもよいでしょう。
 

 

©Planned parenthood Federation of America(PPFA) /監修 高橋 幸子、翻訳 新里 亜子(命育編集部)

 
※こちらのコンテンツ(文章、動画など)は、PPFAの許可を得て翻訳・監修のうえ作成しています。無断転載は固く禁じます。内容の紹介はこちらのページをシェアいただくようお願いいたします。
   

Planned Parenthood Federation of America(全米家族計画連盟/PPFA)

 

アメリカで1916年創立された女性の性・生殖に関する医療サービスを提供する非営利組織。全米に600以上の施設をもち、医療者による安全な人工妊娠中絶手術、避妊薬の処方、性病治療といった医療を手ごろな価格で提供している。学術調査や性教育にも力をいれており、学校や地域コミュニティ、オンラインなどにより毎年120万人の人々に性教育プログラムを実施。 International Planned Parenthood Federation(国際家族計画連盟)に加盟。

PPFA HP(https://www.plannedparenthood.org/)

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