思春期

【国際基準の性教育】思春期の子どもたちへ個人の安全について何を教えたらいい?前編(気をつけたいポイント)

 

昨今の思春期の子どもたちは安全面において、過去に存在しなかった脅威に対処しています。ここでは、いじめ、オンラインでの安全確保、セックス、薬物やアルコールについてティーンと話し合うためのヒントを紹介します。

 
※こちらの記事は、毎年世界で約120万人に性教育のプログラムを提供しているアメリカのPPFA(全米家族計画連盟)による記事を、許可を得て、命育にて翻訳・日本向けに医療監修のうえ作成しています。保護者が子どもに性のことを伝える難しさや抵抗感は、世界共通。
国際基準の性教育ですが、保護者や子どもの気持ちに寄り添いつつも「伝えておきたい知識をシンプルに・科学的に」伝えるコツを紹介しています。ぜひご参考ください。
 

どのようなことに気をつけたらいいの?

お子さんが良い意思決定ができるように手助けすることができます。

お子さんはますます自立してきていることでしょう。だからといって、お子さんが安全を確保し、適切な判断を下すためにあなたの助けを必要としていないということではありません。あなたがお子さんが幼い頃に、道を渡る方法や自転車に安全に乗る方法を教えたように、思春期のお子さんに、いじめ、オンラインの安全、周りからの同調圧力に対処するために必要なスキルを教えることができます。

 

家庭では、尊敬、共感、思いやりを示しましょう。

他人がどのように扱われるべきかについてのあなたの信念を共有し、その信念を貫きましょう。良いロールモデルとはどのようなものか考えてみてください。あなた自身が、見知らぬ人や同僚、家族に対して、お子さんに将来このようにして他人に接して欲しいと考える「敬意」を持って接してください。お子さんが、周りに同調するだけでなく、正しいことのために立ち上がる価値を理解できるようにしましょう。

 

安全な行動のお手本になりましょう。

インターネットで読んだ情報が信頼できる情報源からのものでない場合は、その情報を鵜呑みにしないようにしましょう。また、ソーシャルメディア上で個人情報や地理的な位置情報を共有することにも、十分注意してください。アルコールに関しては、思春期のお子さんの前でどれだけの頻度でどれだけの量を飲むかを考え、自分自身の飲酒についてお子さんにどのように話すかを考えてください。

 

 

いじめについて子どもとどのように話したらいい?

いじめは決して許されることではないということをお子さんに理解してもらい、いじめられている場合はお子さんを助けてあげましょう。いじめには以下が含まれます。

 

  • 脅すこと
  • 噂を流すこと
  • 疎外感を抱かせること
  • 人前で人に恥をかかせること
  • ・殴る、蹴る、殴る、押すなどの暴力行為
  • からかい、誹謗中傷
  • ・他人の物を壊したり盗んだりすること
  • ・いじめられた側が心身の苦痛を感じるもの*

 
お子さんにこういった行為は許されないことだと明確にしましょう。何よりも、あなた自身がこれらの行為を行わないことで良い例となりましょう。

 

※参考:日本では、「いじめ防止対策推進法」(2013)で「いじめ」を「児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係にある他の児童生徒が行う心理的又  は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの」としており、行為がいじめにあたるかどうかの判断は、表面的・形式的に行うのではなく、いじめられた児童生徒の立場で行うとされています。

 

もしお子さんがいじめで困っていたり、誰かをいじめているのではないかと思う場合、お子さんに何が起きているのか聞いてみましょう。お子さんの話に耳を傾け、お子さんがなぜそのように行動しているのかを理解する手助けをしましょう。いじめの加害者になってしまうのには理由があります。それは、ほとんどの場合、人生の中でなんらかの傷を負い、それが原因となっていることが多いからです。カウンセラーやセラピストと話すことは、感情を整理するのに役立ちます。
 
もしお子さんがいじめられている場合は、より大きな問題につながる可能性があります。いじめの最も深刻な結果として、いじめを受けている思春期の子どもは、他の思春期の子どもよりも自殺や自傷行為のリスクが高いということです。いじめはうつや不安を引き起こし、自尊心を低下させます。いじめられた思春期の子どもは、他の思春期の子どもよりも学校をサボる可能性が高く、そのことが彼らの成績に影響を及ぼす可能性もあります。
 
学校でいじめられている場合は、あなたに相談できることをお子さんに伝えてください。「困っていることはないか」、「嫌がらせをうけてないか」、「大変な思いをしていないか」など、いじめの話をする時は、いじめ以外の言葉を使う方がよりよいかもしれません。なぜなら、いじめは幼い子どもにしか起こらないことのように聞こえるかもしれませんし、思春期のお子さんにとって恥ずかしく感じるかもしれないからです。

時には、自分がいじめられていることが恥ずかしく思い、誰にも打ち明けない人もいます。お子さんがいじめを経験しているかもしれない兆候はこちらです。
 

  • ・登校時間が早すぎたり、遅すぎたりする
  • ・大切な持ち物が無くなったり、壊されたりし、それを説明したがらない
  • 説明のないけが
  • 社交的な状況を避ける
  • うつ、または自傷行為の兆候がある(例えばリストカットなど)
  • ・これらは、不健全な関係の兆候でもあります。お子さんと話をして、何が起きているのかを理解しましょう。何があってもお子さんを愛していること、お子さんを助けたいということを伝えてください。いじめに対処する上での注意点を以下に示します。

 
■ すべきこと

  • ・お子さんの話に耳を傾け、慰めてあげてください
  • ・何が起こっていてもそれはお子さんのせいではないことを伝えてあげてください
  • ・学校の責任者に状況を話しましょう。そして、いじめをやめるための助けを求めましょう。

 
■ すべきでないこと

  • 反撃するように勧めないでください。その結果、けがを負ったり、停学や退学になったりすることもあります。
  • いじめを無かったことにしたり、乗り越えるように言わないでください。誰も自分のことを気にしていないように感じさせたり、状況が決して良くならないと感じさせたりしてしまいます。
  • もっと周りに溶け込むように努力しなさいと言うのはやめましょう。自分に問題があると感じさせたり、自尊心をさらに傷つけることになりかねません。

 
思春期の子どもたちの中には、LGBTQ (性的少数者) や障害の有無、宗教的・民族的マイノリティのように、いじめの標的になる可能性が他より高い人もいます。
 
障害や宗教的、民族的背景を理由に人に嫌がらせをするのは法律に触れることのある人権侵害です。学校では通常、そうしたいじめや嫌がらせを防止するための方針が定められているでしょう。これらの嫌がらせの被害者として、教師や学校の責任者と話をするのは何も悪いことではないということをお子さんに知ってもらいましょう。もしお子さんが障害を持っているのであれば、担任の先生や他の学校の職員さんと相談して、お子さんが安心できるような計画を考え出してください。すべての学校がLGBTQのお子さんを保護するルールを持っているわけではないですが、選択制の制服を導入する学校もあり、変わりつつあります。
 
特に女子同士の中で、「誰とセックスしているのか」「どんなセックスをしているのか」といううわさを流すことを中心に、いじめが行われている場合があります。このようないじめは「スラットシェイミング(セクシュアリティに関して期待される行動や外見に背いていると考えられる人たち、特に女性と少女を非難する行為である)」と呼ばれることもあります。性についてオープンで誠実な対話をすることは、子どもたちが性をより良く理解し、他人を自分の価値観で判断することを減らすのに役立ちます。
 
お子さんがいじめに苦しんでいるのであれば、カウンセラーやセラピストに相談するとよいでしょう。また、インターネット上のトラブルであれば、警察やネット専用のホットライン(参考:子どものネットトラブル「こたエール」https://www.tokyohelpdesk.metro.tokyo.lg.jp/ )が相談に乗ってくれます。主治医や学校の指導カウンセラー、最寄りの保健所が、お住まいの地域で見つける手助けをしてくれるかもしれません。また、学校の外で自分の興味を追求したり、学校での活動に参加したりすることを奨励することで、友達やコミュニティを見つけたり、自尊心を高めることができます。

 
 

©Planned parenthood Federation of America(PPFA) /監修 高橋 幸子、翻訳 新里 亜子(命育編集部)

 
※こちらのコンテンツ(文章、動画など)は、PPFAの許可を得て翻訳・監修のうえ作成しています。無断転載は固く禁じます。内容の紹介はこちらのページをシェアいただくようお願いいたします。
   

Planned Parenthood Federation of America(全米家族計画連盟/PPFA)

 

アメリカで1916年創立された女性の性・生殖に関する医療サービスを提供する非営利組織。全米に600以上の施設をもち、医療者による安全な人工妊娠中絶手術、避妊薬の処方、性病治療といった医療を手ごろな価格で提供している。学術調査や性教育にも力をいれており、学校や地域コミュニティ、オンラインなどにより毎年120万人の人々に性教育プログラムを実施。 International Planned Parenthood Federation(国際家族計画連盟)に加盟。

PPFA HP(https://www.plannedparenthood.org/)

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