児童期/思春期
かゆみやニオイ…人には聞きづらいデリケートゾーン(陰部)のトラブル(子ども~更年期まで)
デリケートゾーン(陰部)ってどこを指すの?
大人の女性でも、自分のデリケートゾーンを意識して見たことがある人は少ないのではないでしょうか。デリケートゾーンは、恥丘(①)から肛門(⑨)までを言います。とても薄い皮膚と粘膜でできているため、汚れやすく傷つきやすい箇所です。つまり、トラブルも起こりやすいのです。
- ① 恥丘(ちきゅう):恥骨の皮膚部分で、なだらかに盛り上がっている。
- ② 大陰唇(だいいんしん):腟口や尿道をふっくらと覆っている。
- ③ クリトリス:外尿道口の前にある小さな突起。男性のペニスにあたる。
- ④ 外尿道口(がいにょうどうこう):尿が排出される出口。
- ⑤ 腟前庭(ちつぜんてい):左右の小陰唇に囲まれたくぼみ。
- ⑥ 腟口(ちつこう):左右の小陰唇の間にある腟の入口。出産時や性行為に対応。できるだけの伸縮性を保持している。
- ⑦ 小陰唇(しょういんしん):大陰唇の内側にある粘膜のひだ。尿道と腟口を左右から覆っている。
- ⑧ 会陰(えいん):腟の後ろの外小陰唇が接する部分から肛門までの部分。伸縮性があり、分娩時には赤ちゃんの頭が通れるくらいまで伸びる。
- ⑨ 肛門(こうもん):
ムレ、乾燥、かゆみ、臭い!デリケートゾーンのよくあるトラブル(原因・年齢別)とは?
デリケートゾーンのトラブルの中でも多いのがムレやかゆみ、臭いです。デリケートゾーンのトラブルは、生理が始まる前の小学生低学年頃、思春期、そして更年期など、年齢によって起こる原因も様々です。トラブルを引き起こす原因とあわせて見ていきましょう。
Q:なぜデリケートゾーントラブルが起こるの?
・腟内の環境の変化によるもの
腸内環境と同じように、腟内にも様々な常在菌が生息しています。健康な腟は乳酸菌の一種である「デーデルライン桿菌(かんきん)」の働きにより、常に“やや酸性”の状態に保たれています。デーデルライン桿菌が少なくなると腟内の自浄作用が低下するため、カンジダ腟炎やクラミジア、淋菌(りんきん)などの性感染症のリスクも伴いやすくなります。
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・思春期の体の変化によるもの
思春期は皮脂の分泌量が多く汗腺も活発になるため、ムレやかゆみを引き起こしやすくなります。また、ホルモン分泌が盛んになることで匂いが強くなってしまうこともあるのです。
・腟内にデーデルライン桿菌(かんきん)が常在しないため
生理が始まる前の子どもの腟内には、まだデーデルライン桿菌が生息していません。そのために雑菌が入りやすく、下着による擦れやかゆみを生じやすいのです。時にはかきむしった傷口から菌が入ってしまうこともあるそうです。
・アレルギーによるもの
子どもの場合は、アレルギーによりかゆみを引き起こすこともあります。ショーツに付着した洗剤や匂いの成分により、デリケートゾーンが赤くなってしまうことも。女性にとってデリケートゾーンは大切なものだと知るためにも、普段から自分で下着を洗う習慣をつけるといいそうです。
・おりものシートの長時間使用によるもの
おりものシートの表面はサラサラでも、汗やおりもの成分を含み、表面には雑菌が付着します。長時間使い続けることにより、ムレやかぶれの原因につながります。外陰部(がいいんぶ)には脇の下と同じアポクリン腺があるため、装着し続けていると嫌な匂いを引き起こすことも。本来ならデリケートゾーンを清潔に保つために使用しているおりものシートも、正しく使わなければ逆効果になってしまいます。
・下着による締め付け
デリケートゾーンの締め付けは、頻尿(ひんにょう)や膀胱炎(ぼうこうえん)などのトラブルにつながりやすいそう。大陰唇の辺りの毛穴が詰まり、ブドウ球菌が付着することにより毛嚢炎(もうのうえん)を起こすケースもあります。きつめのショーツやガードルを履く場合は、長時間の使用は避けた方がよさそうです。
・女性ホルモンの低下によるもの
加齢により、女性ホルモンの分泌量は減少します。腟内のデーデルライン桿菌も少なくなるため、デリケートゾーンのトラブルを起こしやすくなります。特に更年期は腟周りの水分量が少なくなるため、かゆみや尿漏れ、性交痛、灼熱管などの症状が現れます。これらを総称して「GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)」と呼びます。
デリケートゾーンのトラブル対策、受診の目安は?子どもは何科を受診すればよい?
デリケートゾーンのかゆみやニオイが気になったり、おりものに異常が現れたりしたら、産婦人科を受診しましょう。特におりものの異常に関しては性感染症の可能性もあるため、早めの受診をオススメします。おりものの違和感に気づくためにも、正常な時のおりものの状態を知っておくことが大切です。
Q:正常なおりものの状態・色とは?
正常なおりものは、無色透明でニオイもほとんどしません。また、生理周期によっておりものの状態も変化します。排卵期には、生卵の白身のような透明な伸びるおりものが分泌されます。排卵が終わると白っぽく粘り気のあるおりもので、下着につくと黄色っぽくなるものに変わります。この時期を黄体期と言います。
黒や紺などの濃い色よりも、白やアイボリーなどの薄い色の下着を身につけると、おりものの色や状態がわかりやすくなります。トイレに行くたびにおりものをチェックする習慣をつけるといいでしょう。
Q:子どもでも産婦人科を受診できる?
デリケートゾーンの悩みであれば、子どもでも産婦人科で診てもらえます。診察は問診とベッドでの視診で、必要な際は医師が患部を触ることもあります。子どもが不安がるときは、保護者が同席することも可能です。正確な診断のためにも診察について要望がある場合は、受診の際に医師に伝えましょう。子どもが安心して受診できる環境を整えることは、正確な診断のためにも必要です。
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ライティング:畑 菜穂子/イラスト:笠井 優美
監修:八田 真理子
医師専門家(八田先生)の一言アドバイス
思春期は体の変化が訪れるため、「自分は周りの人と違うのではないか」と不安を感じる時期でもあります。とても傷つきやすい時期ですので、親御さんのサポートが必要になります。女性にとって大切なデリケートゾーン について、日頃からお子さんと話せる環境を整えておくといいと思います。たまに一緒にお風呂に入って、体について話す機会を作ってみることをオススメします。
八田 真理子
聖順会 ジュノ・ヴェスタ クリニック八田 院長
産婦人科医。聖マリアンナ医科大学医学部卒業後、順天堂大学、千葉大学、松戸市立病院産婦人科勤務を経て、1998年に「聖順会 ジュノ・ヴェスタ クリニック八田」http://juno-vesta-clinic-hatta.net/を開院。思春期から老年期までの女性の診察・カウンセリングを行う。
性教育や不妊に関する知識の啓蒙活動を行うほか、腟ケアの普及にも力を入れている。著書に『産婦人科医が教えるオトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』(アスコム)。
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