思春期

体型が気になるお年頃…中学生・高校生女子のダイエット、ポイントと注意点

(2022/12/1 一部改訂)

 
テレビや雑誌、SNSや動画の影響を受け「私ももっと細くなりたい」「やせたい」とやせ願望を持つ中学生、高校生が増えています。最近では中高生だけでなく、小学生でもやせ願望がみられるようになり、女子だけでなく男子でも減量に対する関心が高まっています。
ダイエットの低年齢化が進んでいる中で、心配となるのが間違った方法による減量です。この記事では、成長期である思春期(小学校高学年・中学生・高校生頃)のダイエット、とりわけ女子のダイエットの注意点やポイントについて紹介します。

監修:産婦人科医 柴田 綾子先生

 

 

ダイエット願望と思春期女子(小学校高学年・中学生・高校生頃)の身体と心の変化

思春期は、子どもから大人の体型へと変わる移行期です。女性ホルモンの分泌が増えて、男子は男性らしく、女子は女性らしい体へと変化します。
思春期の身体の変化は、健康に成長している証でとても自然なこと。しかし、女の子の場合は胸の膨らみも見られ、体も全体的にふっくらとするので、「太った」と感じる子も多いでしょう。
 
思春期を迎えると、自分への関心も高くなります。テレビや雑誌、SNSや動画などメディアでみる女性はやせていることが多く、女性のボディイメージについて誤った認識を抱きがち。
また、メディアから「痩せている=美しい」というメッセージを様々なシーンで受け取ることで、ますます誤った認識を強めることになります。自分の外見やスタイルを気にかけるようになるだけでなく、他人の評価と自分の体型を結びつけてしまうこともあるでしょう。
 
また、家族や友人の些細な一言が原因で、「痩せたい」とダイエット願望を抱くこともあるでしょう。この時期は、自分の体型について誤った認識をしないように注意が必要です。
 

中学生・高校生に知っておいて欲しい!思春期のダイエットの注意点・リスク

 
やせ体型へのあこがれから、必要性がないのにダイエットに励む子も少なくありません。ダイエットに関する正しい知識がないと、「食事を抜く」「〇〇だけ食べる」など極端な方法に陥りやすくなります。
 
極端なダイエットは、成長期の子どもの健康を損なう可能性があります。エネルギー不足によって朝起きられなかったり、勉強や運動へのやる気や集中力が出なかったり、日常生活への支障も出てきます。そのほかにも、以下のような健康への悪影響が現れる可能性があります。
 

極端なダイエットのリスク① 生理の異常

 
急激に体重を減らしすぎると、生理が遅れたり止まったりすることがあります。無月経が続くと、将来の不妊症のリスクが高まります。
 

極端なダイエットのリスク② 骨粗(こつそ)しょう症

 
20歳までは骨量が増えるピークです。中学生・高校生の時期に骨量が増えないと、高齢期に骨粗しょう症が起こりやすくなります。女性ホルモンには骨を強くする役割もあるため、ダイエットのしすぎで女性ホルモンが減ると、若くても疲労骨折が起こりやすくなります。
 

極端なダイエットのリスク③ 摂食障害(せっしょくしょうがい)

 
拒食症や過食症などの摂食障害には、さまざまな要因が複雑に絡みあって起こります。自分の体型への過小評価(ボディイメージのゆがみ)も一つの原因です。最悪の場合、栄養不良で命を落とすこともあります。
 

「ダイエットで生理が止まってしまった!」どうすればよい?

 
中学生や高校生など思春期は、女性ホルモンのバランスが整っていないため、生理周期が不規則になりやすい時期です。また、受験や入学などストレスや環境の変化により、一時的に生理が止まることも少なくありません。
 
一方で、極端なダイエットが原因で生理が止まってしまうこともあります。体重を落としすぎると、危機を感じた体が生命維持を優先し、卵巣(らんそう)の機能を停止するためです。また、本人にダイエットの意識がなくても、部活等のハードな運動により、同じ状況になることがあります。
 
卵巣の機能の停止が長期にわたると、体重を戻しても、そのまま機能が回復しない可能性もあります。妊娠しにくい体になってしまう危険性もあるので、注意しましょう。
 
もし3ヶ月生理が止まっていたら、そのまま放置せずに、産婦人科を受診するようにしてください。保護者は、お子さんの生理の異常に気付きやすいように、「生理のことで不安や疑問があったらいつでも聞いてね」と日頃から声がけをしておいたり、旅行や試験などのイベント時には、生理の調子について聞いてみたりするのもおすすめです。
 
なお、やせだけでなく肥満も、排卵がスムーズにいかなくなることで生理の異常を起こすことがあります。健康を維持するためには、やせ過ぎでも肥満でもない「標準体重」が目標なのです。
 

*標準体重の計算のしかた

 身長(m)×身長(m)x22 =標準体重です。例えば身長が150cmの方なら
 1.5x1.5x22 = 49.5kg が標準体重です。
 

思春期女子のダイエットのポイント・約束ごと

 
思春期(小学校高学年~中高生)の女子がダイエットをするときは、次のポイントを守りましょう。
 

ポイント① ダイエットのペースはゆっくりめに

 
急激に体重が減ると、生理が止まるなど健康に影響を及ぼすことがあります。1ヵ月の減量スピードは、多くても2㎏程度を目安にしましょう。
 

ポイント② 標準体重とBMIを守る

 
個人差はありますがBMIが18を切ると、生理が止まるリスクが高くなります。やせすぎに注意するだけでなく、理想の体型・体重として誤った目標をたてないようにしましょう。
 
*BMIの計算のしかた=体重(kg )÷ (身長(m)×身長(m))
 
*小・中学生の肥満度については、「ローレル指数」が用いられます。
 
 ローレル指数の計算のしかた= 体重(kg) ÷ 身長(cm) ×身長(cm) ×身長(cm) × 10の7乗
 

ポイント③ 食事は抜かずにバランスよく

 
ダイエット中は、栄養をバランスよく取ることも大切です。極端なカロリー制限は、リバウンドもしやすくなるだけでなく、健康に悪影響を及ぼします。身体の成長を促すためにも、3食きちんと食べるようにしましょう。
 

ポイント④ 運動を取り入れて引き締める

 
ダイエットというと、体重計の数字ばかりに目が向いてしまう子も多いでしょう。体重はあくまで目安の数字です。
 
ダイエット中は、筋トレなど運動を取り入れましょう、筋肉は脂肪よりも質量が重いため、同じ体重でも引き締まって見えるようになります。
 

ダイエットの背景にあるものは?「ボディ・ポジティブ」について子どもと話をしてみよう

 
昨今、多くの子どもたちが「ダイエットをしたい」と思う背景には、テレビや雑誌、SNSやインターネットの動画でみる人の体型に影響を受けていることがあります。そうしたメディアや、周囲の人たちからの影響を受け、自分の体(身長や体重、体型など)に対してどのように感じているのかを「ボディイメージ」といいます。
最近では、海外を中心に「ボディ・ポジティブ」という、ありのままの身体を前向きに愛そうという動きが広がりました。
保護者や周囲の大人は、子どもに以下のようなことを伝えてあげましょう。
 

人の見た目はそれぞれに違い、それが良いということ

・人によって容姿が異なるように身長や体重、体型もさまざまで、違っているからこそ個性があって良く、それが素敵なのだということ
 

メディアの中の体型がすべてではないということ

・テレビや雑誌、インターネットの動画などメディアを通してみる体型はごく一部の人であり、また美しくみえるように加工されたものも多いということ
 
最近は、海外ではさまざまな体型や肌の色の人がモデルとして起用されていることも増え、高級ブランドが痩せすぎのモデルを起用しないという取り組みもされています。
痩せすぎでない、健康的な体の女性を「女性らしくて素敵だね」「筋肉もついていてかっこいいね」など肯定的なメッセージを伝えてあげるのもよいですね。
 

保護者の方へ:【中高生向け記事】「ダイエットのおやくそく」

お子さんと、体の悩みやダイエットのこと、会話できていますか?「注意してもなかなか伝わらない…。」そんなときは、下記の記事をお子さんに読ませてあげてくださいネ。
中高生向けに「易しく・分かりやすく」伝えているので、子どもが自分で読んで、知ることができます。
 
命育プレミアム会員限定記事:【中高生向け】中学生・高校生女の子へ「ダイエットのおやくそく」

 

ライティング:江波 明子(看護師・保健師免許所得)

国立大学卒業後、看護師と保健師の免許を取得。看護師として都内病院に就職し、結婚・育児をきっかけにライター業へ。看護師としての知識と母親としての視点で、分かりやすく情報をお届けします。

監修:産婦人科医 柴田綾子

イラスト:福井 克彦

 

 
 

医師専門家(柴田先生)の一言アドバイス:

以前、「生理がこない」と受診した女の子(16才)は、BMIが18と「痩せすぎ」の状態でした。生理がこないのは体がエネルギー不足になっていることが原因で、卵巣や女性ホルモンを回復するには、痩せすぎを治す必要があるとお話しました。無理に食事を抜いたり、偏った食事をしていると、骨や皮膚にもよくないとお伝えしました。ゆっくり体重を治していくうちに、すこしずつ生理が来るようになりました。
生理は体の状態を表す信号です。もし生理が定期的にこない、生理が止まってしまったときは、放置をしたりせずに、産婦人科へ相談してくださいね。

 

柴田 綾子

淀川キリスト教病院 産婦人科医

名古屋大学情報文化学部卒業するも、在学中の世界遺産を中心とした海外旅行をきっかけに「途上国で弱者となりやすい母子をサポートできる技術と知識を学びたい」と、群馬大医学部3年次に編入。沖縄県立中部病院産婦人科コースで初期研修後,淀川キリスト教病院にて勤務。


活動:

女性医療・保健委員会 チームpcog

関西若手医師フェデレーション

LINEボット:『ラッコの妊娠・性相談室』

『妊婦さんの風邪薬ボット』

本:

『女性の救急外来 ただいま診断中』

命育コンテンツ協力:伝え方ナビ、お悩みQ&A

参考:「女子特有の健康問題 『月経関連疾患と学校生活』」(平成28年度スポーツ庁委託事業「子供の体力向上課題対策プロジェクト」)

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