思春期

悩ましいPMS(月経前症候群)を放置しない!症状を和らげるセルフケアや薬・漢方薬、受診の目安

悩ましいPMSをガマンしない_対処法や受診の目安は

生理の前になるとイライラ・食べすぎ・肌あれなどがあらわれ、生理がくると自然とよくなるようなケースは、PMS(月経前症候群)の可能性があります。
 
多くの女性を悩ませるPMSですが、セルフケアや漢方薬でケアできることを知っていますか?この記事では、PMSの具体的な症状や、PMSを「ガマンするしかない」とあきらめずに対処するセルフケア、薬・漢方薬、受診の目安について紹介します。
 

 

月経前のイライラやめまい…PMS(月経前症候群)とは何?

PMSは「月経前症候群」のことで、その名のとおり生理(月経)の前に起こるさまざまな不快な症状をさします。
 
具体的には、毎月の生理が始まる3〜10日前からイライラや気分の落ち込み、食欲の変化、乳房のはり、肌あれなどの症状が出てきて、生理が始まると自然と症状がよくなっていきます。
 
後ほど詳しく説明しますが、PMSは思春期の女の子にも多いとの報告もあり、早いうちから症状と対処法について知っておくことが大切です。

PMS(月経前症候群)の原因とは

実は、PMSのはっきりとした原因はわかっていませんが、生理周期で変化する女性ホルモンの影響が大きいといわれています。
 
PMSの症状が出る生理前では、女性ホルモンのエストロゲンの分泌が下がりプロゲステロンの分泌が増加していることで、他のホルモンや神経伝達物質に影響をあたえ、さまざまな症状を引き起こすと考えられています。

PMS(月経前症候群)の症状はどのようなものがある?

それでは、PMSにはどのような症状があるのか、具体的にみていきましょう。PMSの症状は、大きく分けて精神神経症状・自律神経症状・身体的症状の3種類があります。

精神神経症状

精神神経症状には次のようなものがあります。

 

  • ・情緒不安定(イライラ、涙もろくなる、不安になる)
  • ・抑うつ(ひどくだるい、やる気がおきない、ひどく落ち込む)
  • ・集中力が低下する
  • ・眠れない、または寝過ぎてしまう

これらの精神神経症状が日常生活に支障をきたすほど強く出る場合は、PMSではなくPMDD(月経前不快気分障害)と呼ばれることもあります。

 

自律神経症状

生理周期により女性ホルモンのバランスが変化し自律神経がみだれると、以下の症状が出てきます。

 

  • ・食欲がわかない、または食べすぎてしまう
  • ・めまい
  • ・のぼせる(顔は暑いけれど手足は冷たいような感じ)

自律神経には体を活発にさせる交感神経と体をリラックスさせる副交感神経の2つがあり、バランス良くはたらくことで内臓を正しく動かしたり体温を平熱に保ってくれたりします。しかし、自律神経のバランスがストレスやホルモンの変化によって崩れると、このような症状が出てしまうのです。

 

身体的症状

PMSでは、精神神経症状や自律神経症状以外にもさまざまな症状が体にあらわれます。人によって差がありますが、次のような症状が代表的です。

 

  • ・むくみ ・腹痛 ・頭痛
  • ・腰痛  ・乳房のはり
  • ・便秘  ・肌あれ(ニキビなど)

 

これら以外にも生理前〜生理中に毎回不快な症状があるのなら、PMSの可能性があります。

PMS(月経前症候群)の対処法は

PMSは、軽い症状であれば自分でも対処ができます。これから紹介する対処法を試してみましょう。

 

生理周期を記録し、症状を把握することから

生理周期やその日の体調をノートやスマートフォンなどに記録してみましょう。体の症状だけでなく、「イライラしやすかった」「やる気が出ない」などの気分も記録しておくのがおすすめです。生理周期などを記録できるアプリケーションを活用してみても良いでしょう。

また、可能であれば毎朝起きたときに基礎体温も記録しておきましょう。基礎体温の変化から排卵日を知ることができ、PMSや生理がいつ起こるか予測しやすくなります。

PMSの症状に対応する治療法、薬や漢方薬

現在、さまざまな薬がPMSの症状を和らげるために使われています。

病院では、主に低用量ピルなどのホルモン剤が処方され、痛みやむくみに対する薬が処方されることもあります。また、その人の体質やPMSの症状に合わせて漢方薬が出されることもあるでしょう。

ドラッグストアやインターネット通販で買える市販薬には、漢方薬やチェストベリーというハーブが主成分のPMS用のサプリメント、頭痛や腰痛に対する解熱鎮痛薬、胃腸薬、睡眠改善薬などがPMSに使用できます。

セルフケアの方法

PMSの原因はまだはっきりとわかっていませんが、ストレスによって症状が悪くなると言われており、セルフケアとしてはリラックスや気分転換をすることが大切です。

生理前から生理中にかけては予定を詰めすぎないようにして、体に負担をかけないように心がけましょう。自分なりのリフレッシュ方法を見つけておくのもおすすめです。

ただし、カフェイン・お酒・たばこはPMSの症状をやわらげるためには控えたほうが良いと考えられています。

≪要チェック≫受診を検討してほしいとき

セルフケアや市販薬を試してもPMSの症状が良くならないときは、産婦人科を受診して相談してみましょう。精神症状が強い方やPMDDの方は心療内科や精神科の受診がおすすめです。

また、普段どおりの生活が難しくなるほどPMSの症状が重たい人も、早めに受診することをおすすめします。つらい症状は一人で抱え込まないでくださいね。

PMS(月経前症候群)のときに飲みたい漢方薬

西洋医学の考え方では、まだPMSの原因ははっきりとわかっていません。しかし、漢方の世界では昔から「気・血・水(き・けつ・すい)」の考え方によって生理前の不調を説明していました。

漢方の「気・水・血」の考え方とPMS

漢方の世界では、体を構成する成分「気・血・水」が満ち足りていて全身をスムーズにめぐっている状態が理想とされています。つまり、「気・血・水」が足りなくてバランスが崩れたりめぐりが悪かったりすると、体のいろいろなところに不調が出ると考えます。

成分 どんなもの? めぐりが悪い状態
おもな症状
足りていない状態
おもな症状

(き)
「血」「水」を動かすエネルギー 気滞(きたい)
イライラ、眠れない
気虚(ききょ)
元気がない

(けつ)
全身に栄養を運ぶ
(血液と考えてOK)
瘀血(おけつ)
肌あれ、ニキビ、のぼせ
血虚(けっきょ)
冷え、だるい

(すい)
全身をめぐる体液 水滞(すいたい)
むくみ、下痢
陰虚(いんきょ)
乾燥、便秘

多くの女性は、生理前になると「気・血・水」のめぐりが悪くなります。そして、もともとの体質と組み合わさることによって、さまざまなPMSの症状があらわれます。

≪症状別≫PMS(月経前症候群)に有効な漢方薬は

PMSの症状に使用する漢方薬はさまざまですが、この記事では市販の漢方薬を紹介します。PMSの症状別に漢方薬を分けたのが下の表です。

 

症状 一緒に考えてほしい症状 適した漢方薬
イライラ 落ち込む、気分が変わりやすい 加味逍遙散(かみしょうようさん)
落ちつかない、胃が痛い 抑肝散加陳皮半夏
(よくかんさんかちんぴはんげ)
体がだるい 食欲がなく元気がない 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
冷え、めまい、貧血、むくみ 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
むくみ 頭痛、トイレの回数が少ない 五苓散(ごれいさん)
のぼせ ニキビ、生理痛、肩こり 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
便秘、肩こり 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)

たとえば、生理前に体のだるさが気になる人で体の冷えやふらつきもある場合、漢方の考え方では「血虚」と「水滞」の状態にあります。全身に「血」をおぎなってめぐりを良くし、「水」のめぐりをスムーズにする当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)を使うと、徐々に症状が和らぐことがあります。
 
このように、漢方薬は全身の状態を考えて選ぶ必要があります。自分に合う漢方薬がわからない場合は、お近くの薬剤師や登録販売者に相談してみてくださいね。

実はPMSに悩む思春期女子も多い!思春期の生理の特徴とPMS

体が女性らしく変化していく思春期は、女性ホルモンの分泌や生理周期がまだ不安定な状態です。そのため、PMSや生理痛の症状が強く出る傾向にあります。

日本のある研究では、女子高校生のほうが成人女性よりもPMSやPMDDの重い症状がある人の割合が多いという結果が出ています(北村ら,2012)。また、思春期のPMSの特徴としては、身体的症状よりも「気分の落ち込み」「過食」「気力の低下」といった精神神経症状を感じやすいことがわかりました(武田ら,2010 山口ら,2022)。
 
もちろん、PMSや生理痛のつらさには個人差があり、まったく症状が出ない人もいれば日常生活に支障が出てしまう人もいます。勉強や部活動、生活上のストレスによってある時期だけ症状が強くなることもあるでしょう。
 
周りの大人は、子どもがPMSのことをいつでも相談できるような環境をつくることが大切です。

まとめ

毎月やってくるPMSは、成人女性だけでなく思春期の女の子にも出やすい症状です。パートナーや子どもがPMSでつらそうにしていたら、無理をさせず体と心を休ませてあげてください。この記事で紹介した漢方薬やセルフケアを試してみても、PMSが和らがなかったり生理が終わっても続く症状があったりする場合は、小児科や婦人科、心療内科へ相談しましょう。

 
 

ライティング:松本 萌
薬科大学卒業後、ドラッグストアでOTC(市販薬)専門薬剤師、調剤薬局薬剤師を経験。現在は、Webライターとして健康に関する記事を執筆中。

 

監修:産婦人科医 柴田 綾子

 
参考:
月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)(公益財団法人日本産婦人科学会HP)
 
月経前症候群(PMS)、月経前不快気分障害(PMDD)に関する標準治療(一般社団法人女性の健康とメノポーズ協会)
 
漢方コラム 月経前緊張症(Premenstrual-Syndrome:PMS)(東京女子医科大学 附属東洋医学研究所 広報誌)
 
月経前症候群(PMS)の漢方治療(クラシエHP)
 

専門家(産婦人科医 柴田 綾子先生)からのアドバイス

PMSであることに気づかずに我慢している女性は多くいます。「毎回の生理前に体調が悪くなる」「生理が始まると少しずつよくなる」「日常生活に支障がでている」「ご本人が困っている」に当てはまる方はPMSの可能性があります。
 
まずは生理を管理し、生理前にストレスの多いイベントや予定を避ける、生理前の1週間は睡眠や休息、栄養(カルシウムやマグネシウム)を多くとることが重要です。薬局で販売されている、PMS用のサプリメントや漢方をためすのもお勧めです。産婦人科では低用量ピルや漢方による治療を相談できますので、困ったらいつでも受診してください。

 

 

柴田 綾子

淀川キリスト教病院 産婦人科医

名古屋大学情報文化学部卒業するも、在学中の世界遺産を中心とした海外旅行をきっかけに「途上国で弱者となりやすい母子をサポートできる技術と知識を学びたい」と、群馬大医学部3年次に編入。沖縄県立中部病院産婦人科コースで初期研修後,淀川キリスト教病院にて勤務。


活動:

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本:

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