幼児期児童期

その防犯対策、本当に安全?~幼児・小学生を性犯罪から身を守るために

(2023/7/7 一部改訂)

 
「わが子が、犯罪に巻き込まれてしまったら…」という心配は、親ならば誰でも頭をよぎるものですよね。
警視庁のデータによると、令和4年の18歳未満の児童買春事犯等(児童買春、淫行させる行為、みだらな性行為等)の検挙件数、被害児童数は、前年よりやや減少してはいるものの、それぞれ2,206件、1,461人。また、18歳未満の性的な写真や動画に関する児童ポルノ事犯の検挙件数、被害児童数は、いずれも前年より増加しており、それぞれ3,035件、1,487人。
 
参考:「令和4年における少年非行、児童虐待及び子供の性被害の状況」(警察庁)
 
大人と行動することが多い幼児の頃から、小学生となり、少しずつ親の目の届かない世界へ旅立ってゆく子供達。もし危険にさらされた時、「何かおかしいな」と気づき、身を守れるように、子供にわかりやすい対策を伝えておくことがとても大切です。そのために、ここでは、まず大人が子供を狙う犯罪、特に性犯罪の現状と、子供に注意を促すための「伝え方」を紹介します。
 

 

その防犯対策、子供にとって本当に安全?

 
子供の頃、「知らない人についていっちゃダメ」「女の子なんだから暗くなってからの一人歩きは危険」と注意を受けた記憶のある方も多いのでは。でも、本当にそれで子供を守れるのでしょうか。
 

暗くなったら危ない?

子供達が暗くなる前に帰って来れば安心と思っていませんか?
実際は下校時間を狙った3時ごろから夕方など、まだ明るいうちに起こることが多いのです。子供を狙う犯罪者は子供達の行動を把握し、子供が一人きりになる瞬間を狙っています。
 

うちの子は、「男の子だから」「まだ小さいから」大丈夫?

前述の警視庁のデータによると、令和3年の12歳以下の子供が被害者となった「強制わいせつ」の被害認知件数は、748件。その中で男児の被害は89件(約12%)でした。また、5歳までの幼児の被害認知件数は68件(約9%)です。これが、連れ去りなど「略取誘拐」になれば、男児の割合、幼児の割合はさらに高くなります。
「男の子だから」「まだ小さいから」安全ということは決してありません。
男の子も女の子も、小さいうちから同じように危険について指導するのが鉄則です。
 
参考:「令和3年における少年非行、児童虐待及び子供の性被害状況」(警視庁)
 

知らない人・怖い人についていっちゃダメ?

実は低年齢の子供は「知らない人」から性被害を受けるよりも、知人から性被害を受けることが多くあります。また、仲良くなってから犯罪に及ぶ犯罪者もいます。
悲しいことですが、「知らない・怪しい大人」だけではなく「知り合い」や「仲良くなった優しいお兄さんやお姉さん」から被害を受ける可能性を想定して話をしておくとよいでしょう。
 

子供を狙う性犯罪の事例から

 
実際に子供が性被害に遭った事例から、どんな状況で何が起こったのかを知ることは、子供を守ることにもつながります。
 

男の子のわいせつ動画がネットに

2016年、7歳から15歳の男の子たちにわいせつな行為をし、その動画をネット上で交換していた児童ポルノ愛好グループの男5人が逮捕されました。ゲームセンターや路上で遊んでいる男の子に「ゲームさせてあげる」「一緒に遊ぼう」などと声をかけ、自宅や公衆トイレなどに連れ込み下半身を触るなどの行為をして、その様子を撮影。少なくとも47人の男の子の被害が確認されていますが、実際の被害者は100人以上との見方もあります。
 
参考:男児ら47人にわいせつ行為や動画撮影の疑い 5人逮捕(朝日新聞)

親戚からの性的虐待で、大人になってからPTSDに

2014年、札幌高裁は子供の頃に叔父から性被害を受けた女性の訴えを認め賠償を命じる判決を下しました。3歳から8歳にかけて叔父から複数回にわたる性的虐待を受けていた女性が、自分が性被害を受けていたと気がつき、その後PTSDを発症。損害賠償請求に踏み切りました。
叔父は「この事は誰にも言ってはダメだよ」と口止めをしており、彼女も「この事を打ち明けたら家族がバラバラになってしまう」と苦しんだそうです。
 

参考:加害者に賠償命令 札幌高裁、幼少期の性的虐待で/日経新聞電子版


 

加害者側の視点から防犯を考える

 
2つの事例を見て、どんなことに気がつきましたか?親としては、大変腹立たしく、目をそむけたくなりますが、実際にあったことです。
 
子供に対する性犯罪の加害者たちは、非常に身勝手な欲求によって、巧みに子供たちに近づき、言葉や立場を利用して子供たちの心を支配していることがわかります。
これまでに多くの小児性犯罪者と関わってきた精神保健福祉士の斉藤章佳先生による著書、『「小児性愛」という病-それは愛ではない』によると、子供への性犯罪の加害者達の多くは「どこにでもいる普通の見た目の人」だといいます。彼らは言うことを聞かせられそうな子供や、秘密を守れそうな子供見抜くのが上手く、子供を支配することで欲望を満たすそうです。
 
漠然と「知らない人・怪しい人」ではなく「あなたを周囲から見えない場所へ連れていこうとする人」などの具体的な例を挙げて子供に話してあげること、身体を触られたり触らせられたりしたら、とにかく早く逃げて周囲の大人に相談することを、日ごろから何度も伝えておくこと、がとても大切なのです。
 
参考:『「小児性愛」という病-それは愛ではない』(出版・ブックマン社/著・斉藤章佳)
 

性犯罪から守るために、子供にどう伝える?

 

 
「子供が性被害にあってしまったら」だなんて、本来は考えたくもない話。しかしそれを現実にしないためにも大人が実情を知り、子供が小さいうちから「こんなこともある」「こういうときは、こうしよう」と話しておくことがとても大切です。
 

「プライベートゾーン」について伝えること

・どこを、見られたり見せられたり、触られたり触らされたりしたら、おかしいのか(「プライベートゾーン」…水着や下着で見えない場所+くち)
・プライベートゾーンに関わらず、体を見られたり見せられたり、触られたり触らされたりして「イヤだ」と思ったら、「イヤだ」と言って逃げていい
・少しでも不安なことがあったら周りの大人に伝えて
・決して、あなたは悪くない
 
遊んでいるときに2人きりになろうとする、口止めをしてくる大人にも注意が必要です。
小さな子供にもわかりやすい表現で描かれた絵本を活用するのもおすすめです。
 
<プライベートゾーンについて書かれた絵本>
 『だいじだいじどーこだ』(作:遠見才希子、絵:川原瑞丸)
『とにかくさけんでにげるんだ』(作:ベティー・ボガホールド、訳:安藤由紀、絵:河原まり子、出版社:岩崎書店)
『いいタッチ、わるいタッチ』(作:安藤由紀、出版社:復刊ドットコム)
『わたしのはなし』(監修:山本 直英、作:和歌山 静子、出版社:童心社)

性犯罪への先入観をなくすこと

子供を狙うのは知らない人、怖そうな人だけではありません。
「年頃の女の子は気をつけて!」は間違い。女の子も男の子も幼児でも同じように気をつけましょう。
 

子供が話しやすい環境を作りましょう

子供に性の話をするのは抵抗があるかもしれません。しかし性をむやみにタブー視しない雰囲気を小さいうちから作っておくことで、子供が成長してからも話がしやすくなります。
危ない目に遭ったとき、万が一性被害に遭ってしまったとき、子供が話してくれる関係を築いておくことも、重要な防犯対策のひとつです。
 
犯罪の話、特に性に関する話を子供にするのは少しためらいがあるかもしれません。しかし、親が正しい知識を伝え、子供に危機意識を持たせることが、犯罪から守るためにとても大きな力になるのです。
 

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